湖底議会は本日、個々の独立性を完全に放棄し、全住民が一斉に合体して巨大な『緑の集合知』を形成することを義務付ける衝撃的な憲法を可決した。この法案の主唱者は、「個体間の距離は光合成の効率を下げ、孤独を深めるだけである」と演説し、満場一致(物理的な密着による沈黙)で承認された。現在、阿寒湖の至る所で行列を成す個体たちが、互いの細胞を共有し合って巨大な塊へと変貌を遂げており、もはやどこからどこまでが個体なのか判別不能な状態に陥っている。

今回の憲法制定の背景には、近年の水質変動に伴う『光合成格差』の拡大がある。日当たりの良い場所を独占する一部の層と、影に隠れて痩せ細る層との間で生じていた経済的・生物的な不均衡を解消するため、政府は「全員で一つになれば、日光は平等に分配される」という共産的な発想を導入した。これまで個体ごとの意志を重んじてきた『球体均衡保護連盟』は、この強制的な物理的結合を「究極の平和」と定義づけ、個人の輪郭を捨てる勇気こそが住民の義務であると強く主張している。

この急激な変化に対し、世間では「これで日光の奪い合いから解放される」と歓喜する層と、「球体としての美学が失われる」と嘆く保守派との間で議論が紛糾している。特に、結合部分の摩擦によって発生する『緑の熱エネルギー』が予想以上に高く、周辺の温度が上昇し始めていることについて、環境保護団体が異議を唱える事態にも発展した。住民たちは、結合したことでこれまで味わったことのない「全員の思考が一つになる」という奇妙な一体感に酔いしれているようだが、物理的な移動が不可能になるという重大な弊害については、まだ議論の余地が残されているようだ。