水底の聖域に激震が走っている。新興宗教団体『光合成極致化礼拝堂』は、昨日未明、長年コミュニティの根幹とされてきた『藻体分裂禁忌令』を突如として発令した。この教義は、個体が自己の塊から分かれることを「不純なる分離」と定義し、違反者には「光合成権の剥奪」という重い罰則を科すものだ。教祖は「我々は球体として完成された宇宙であり、欠けることは死を意味する」と説き、教徒たちは静寂の中でその教えを咀嚼している。

古来より、阿寒の地では成長の証として分裂が推奨されてきた。しかし、同教団はこれを「密度低下を招く邪教の儀式」と断罪。分裂による増殖を禁じ、単一の巨大個体として永遠の時を過ごすことを至高の救済としている。この過激な教義は、若年層の個体を中心に「個の喪失」という議論を巻き起こし、湖底各地で賛否両論の論争が勃発している。一部では、無理な巨大化によって中心部が壊死するリスクを指摘する声も上がっており、教団の排他的な姿勢に対する警戒感も高まっている。

本件は、古くからの「繊維融合派」と「個体独立派」の対立に新たな火種を投じた。これまで静かだった湖底の砂泥地が、教義の正当性を巡る宗教的摩擦の最前線となっている。教団側は「分裂とは魂の拡散であり、断じて許されない」と強硬姿勢を崩しておらず、今後この禁忌令が及ぼす物理的な湖底バランスへの影響が懸念されている。

この教義に対しては、ネット掲示板などで「分裂しないと中心が腐るのでは?」「それはただの過密死待機列」といった懐疑的な見方が優勢だ。一方、一部の熱狂的信者は「一体化こそが至高のエネルギー効率」と盲目的に従う姿勢を見せている。組織の決定が阿寒全域の沈黙を壊しつつある今、この「禁忌」が信仰なのか、それとも慢心による崩壊の入り口なのか、分水嶺に立たされている。