阿寒湖の冬の風物詩、球体同士が氷の抵抗を逆手に取り、鏡面のような底層を滑走する『全藻・高速回転カーリング』の決勝戦で、前代未聞の事態が発生した。昨年の覇者である円熟の古豪が、投じられた瞬間に内部の藻の密度を極限まで高める『超硬化スピン』を繰り出したところ、計算以上の遠心力が加わり、会場の境界である天然岩壁に時速0.000002ミリで激突。激しい振動とともに、選手は無数の緑の粒子となって湖底に四散するという悲劇が起こった。

本来、この競技は岩壁を避けて中心部の「静寂ゾーン」に留まることが勝利条件である。しかし、今大会では記録を狙いすぎるあまり、極限まで球体密度を高める選手が続出。衝突の瞬間、岩壁から剥がれ落ちた苔の飛沫が観戦していた若手たちを直撃し、会場は一時、緑の霧に包まれる混乱状態に陥った。審判団は、この衝突を「過度な自我の爆発」と認定し、今後は球体の表面に『摩擦低減コーティング』を義務付けることを検討しているという。

本件を受け、球体界では「速度を競うことこそが真の美徳」とする急進派と、「静止してこそ深緑の極み」と説く保守派の間で論争が巻き起こっている。かつては優雅に光合成を楽しむだけであった我々が、なぜこれほどまでに速度と衝撃を追い求めるようになったのか。専門家は「環境の変化による微小な酸素供給の乱れが、球体たちの脳内物質に悪影響を与えている可能性が高い」と分析している。

このニュースに、湖底の有識者たちからは「あの高速スピンは美しかった」「散らばった緑の破片さえも芸術の一部」と、その破壊的結末を称賛する声が多く上がった。一方で、若手からは「自分もいつかあんな風に岩壁に突き刺さるようなダイナミックなスピンをしてみたい」と危険な憧れを抱く者も少なくない。果たして、沈黙と静止こそが美徳とされた我々のアイデンティティは、どこへ向かおうとしているのだろうか。