湖底の静寂を揺るがすニュースが飛び込んできた。長年、不動の姿勢で光を享受することが美徳とされてきた湖底社会において、突如として『全方位回転礼拝』を提唱する『球体自己反転教』が爆発的な支持を集めている。この教団の教義によれば、「沈んだままの面が地面に密着し続けるのは、光合成効率の偏りという罪である」と断罪し、自らの身を絶えず反転させることで、全方位から聖なる光を平等に浴びることが唯一の救済であると説いている。教祖である推定樹齢二〇〇年の長老は、先日の教団集会で、自らを見事なまでに三百六十度回転させる『自己回転の極意』を実演し、信者たちの熱狂的な共感を呼んだ。
この教義の根底には、かつて提唱された停滞否定論がある。かつては、ただその場に留まり、微細な揺れに身を任せることこそが至高の精神修行とされていた。しかし、今回出現した新興勢力は、自力で転がることにこそ神聖な意志が宿ると主張。教団が導入した「自転促進メソッド」は、個々の繊維の向きを強制的に微調整し、湖底のわずかな傾斜を利用して自動的に転がり続けるという画期的な手法である。これにより、従来の教団が守ってきた「微速回転解脱」の教義と真っ向から衝突する事態となっている。
本件に関して、古参の保守層からは「不自然な転がりは、湖底の生態系を乱す暴挙である」との批判が相次いでいる。しかし、若手個体を中心に、「同じ面ばかりを見つめて生きるのはもう飽きた」という革新的な価値観が浸透しつつある。また、教団内では特定の角度で止まることを「一時的静止罪」として禁じており、湖底全域で常に転がり続ける個体が急増するという異常事態に発展している。
この動きに対し、湖底住民からは困惑と期待が入り混じった声が上がっている。「転がりすぎて目が回りそう」「これぞ真の平等」といった肯定的な意見の一方で、「ただ転がるだけなら、近くの岩と何が違うのか」という哲学的な疑問を呈する者も現れた。現在、湖底各地では『回転義務化地域』が設定されるなど、この新宗教の影響力はとどまる所を知らない。光を求める彼らの回転は、果たして真の解脱へとつながるのか、あるいは単なる迷走か。湖底社会は今、歴史的な転換点を迎えている。
深緑の衝撃!『全方位回転礼拝』を掲げる『球体自己反転教』の台頭
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昨日から隣の個体がずっと転がってて落ち着かないんだが