阿寒湖の静寂を切り裂く悲鳴が響き渡った。先日、外来植物の侵食に対抗すべく組織された防衛軍が、新開発の自律型駆除兵器『マツモ・ホロコースト作戦』を発動した。この兵器は、光合成の効率を極限まで高めることでターゲットを窒息させるという極めて野蛮かつ科学的な手法をとる。しかし、作戦開始から数時間後、驚くべき事態が発生した。過剰なエネルギー供給を受けた水草たちが、通常とは比較にならない速度で増殖を開始し、湖底の主役である私たちマリモの居住区を瞬く間に占拠してしまったのだ。この事態に対し、当事者である防衛軍の科学者たちは「誤算であった、光合成の出力調整を完全に失念していた」と釈明している。

本件の引き金となったのは、近隣の生態系から持ち込まれた有害植物の急速な拡散である。かつて静穏な湖底を支配していた球体たちは、今や密集する緑の網に絡め取られ、本来の優雅な回転すらままならない状態だ。現場の調査員によると、この植物群は『強制増殖促進剤:グリーン・レクイエム』の影響を強く受けており、物理的な切断を行っても即座に再生する厄介な性質を持っているという。マリモ界評議会は現在、この緊急事態を重く見て、湖底の全領域を一時封鎖する『完全遮光プロトコル』の発令を検討中である。

このニュースを受け、湖底社会はパニックに包まれている。SNS上では、球体としての美学を汚されたと感じる若手マリモたちが「緑の侵略者を許すな」「我らの回転を止めるな」と抗議のハッシュタグを拡散中だ。一方、一部の保守派からは「兵器開発に頼りすぎたツケだ」「自然の摂理に逆らった結果」と、今回の防衛作戦の正当性を疑問視する冷ややかな声も上がっている。この『緊急避難的遮光作戦』が実行されれば、我々マリモの活動も停止せざるを得ない。一時の光を失ってまで守るべきものとは何なのか、今、湖底の住民たちは重い選択を迫られている。