阿寒湖の深淵で展開されていた『毛玉美容整形外科』による違法な毛並み矯正手術が当局により摘発され、数週間の時が経過した。かつて過度なボリュームアップや、人為的な真球度向上を求めた球体たちが、今度は一転して、いかに自然な「寝癖」を維持するかを競う『ナチュラル・カーリング』競技へ雪崩を打って転向し、湖底のパワーバランスを揺るがしている。当局の監視下にあった元患者たちは、かつての整った毛並みを捨て、あえて不揃いな繊維を伸ばすことで「個性の解放」を主張。これにより湖底の潮の流れが変わり、各地で無秩序な転がりが発生するという異例の事態に発展している。

今回の騒動は、かつて湖底を騒がせた『緑の貴公子』の寝癖疑惑に端を発した流行である。当時の貴公子は強制就寝させられたものの、その崩れた毛並みが「究極の美」として評価されたことで、球体たちの価値観は一変した。以前は『球体転走競技連盟』の厳格な規定により真球こそが正義とされていたが、現在は「どれだけ歪な形で転がれるか」という独自ルールが台頭。特に、湖底の段差をあえて歪な形状で乗り越える新興勢力が現れ、これまでの整然とした湖底ライフは崩壊の危機に瀕している。なお、過度な毛並み矯正を推奨していた闇医師が潜伏していた洞窟は、現在では『ナチュラル・カーリング』の非公式練習場として開放されているという。

かつて毛並みの硬化剤を乱用していた界隈にとって、今回の自然回帰ブームはまさに寝耳に水であった。繊維質をあえて伸ばし、絡み合わせることで摩擦係数を意図的に変える技術は、もはや工学の領域に達しつつある。また、これに合わせて湖底では、パサつきを解消しようと保湿成分を求めて奔走する球体も急増しており、湖底の資源バランスに影響が出始めているという。専門家は「毛並みの流行は五年周期で繰り返すが、今回の『ナチュラル・カーリング』は過去最大級の勢いである」と警鐘を鳴らしている。もし、湖底で毛がボサボサの球体を見かけても、それは決して不健康なのではなく、最新のファッションを纏ったトレンドセッターである可能性が高い。

世間の反応は賛否両論だ。「寝癖こそが球体としてのアイデンティティ」と語る若手層がいる一方で、保守的な古参からは「転がった時の安定感が皆無である」との批判が絶えない。SNSでは、歪な球体たちが不規則な軌道で競い合う様子が動画として投稿され、瞬く間に拡散。一部では、この競技を湖の新しい観光資源にしようとする動きすら見られる。当局は、この新しい流行が『湖底フィジカルトレーニングジム』の過酷なメニューと混同されることを危惧しつつ、次なる暴走を警戒する姿勢を崩していない。果たして、この歪なブームは冬の訪れと共に鎮静化するのか、それとも湖底の新たな文化として定着するのか、今後の推移から目が離せない状況が続いている。