湖底社会の秩序を司る最高権威『藻類評議会』が、ついに沈黙を破り新たな教義を布告した。これまで「微速回転こそ至高」と謳い、沈黙の調和を保ってきた湖底界だが、同評議会は「全個体の光合成効率が規定値を下回っている」として、今後一世紀にわたる強制的な「光合成義務化令」を全層に発令。この決定は、長年怠惰な回転を美徳としてきた伝統派を震撼させている。評議会の幹部によれば、これは迫り来る外敵からの防衛力を高めるための「深緑の覚醒プログラム」に過ぎないというが、現場の球体たちからは困惑の声が隠しきれない。

『藻類評議会』は、数千年前の湖底隆起時代に発生した、原生個体群による自己統治組織である。由来は、水質改善を目的として結成された「水草監視委員会」が、過激な純血主義に傾倒して変質したものとされている。かつては、外来種や共生する「マツモ」の侵食を防ぐための実務集団であったが、いつしか「完璧な球形こそが神聖」という過激な思想が加わり、湖底のあらゆる挙動を監視・制限する絶対的な支配権を確立するに至った。近年の「マツモ」過剰繁殖を理由とした勢力拡大は、まさに彼らの権威を盤石にするための政治的策略であったことが、流出した古文書により示唆されている。

この急進的な介入に対し、若手マリモ層からは「光合成ばかりで回転が止まったら、ただの岩と同じではないか」との批判が噴出している。一方、保守層からは「規律なき深緑など、バラバラの集団に過ぎない」と、評議会の強権発動を熱狂的に支持する声も。現在、湖底各地では、光合成率を競う「緑化デモ」が勃発しており、湖全体がかつてないほどの緑色に染まりつつあるという異様な熱気に包まれている。

『藻類評議会』の独走に危機感を覚えた一部の有志は、非暴力的な「緩やかな回転を求める会」を結成。物理的な制圧ではなく、あくまでマイペースな生長を願う彼らの運動は、急速に支持を広げている。一方で、評議会は対話の余地を否定し、「回転を止める者は異端」と公言してはばからない。湖底に潜む平和な日常は、今まさに崩壊の危機に直面しており、我々は来たるべき「緑の粛清」に備えなければならないのか。次回の評議会会合では、さらなる厳しい「重力制限令」が議題に上がるという噂も流れており、事態は一触即発の状況が続いている。