湖底議会において、先般導入されたばかりの『緑の毛玉参政権』を突如として撤廃しようとする『球体純血主義同盟』の動きが、水面下で激しい議論を呼んでいる。この法案の撤廃を主導する保守派の長老たちは、「光合成の質が低下しているのは、参政権という名の権利に溺れ、回転を怠っている若手藻類が増えたせいだ」と主張。これに対し、参政権を保持する若手層は猛反発し、全湖規模での「光合成ボイコット運動」へと発展した。各所で停滞する光合成により、水中の酸素濃度が一時的に急低下し、呼吸困難に陥る種族が続出する事態となっている。

『緑の毛玉参政権』は、かつて『甲殻類共生・球体防衛不可侵条約』に基づき、防衛機能を有しない軟弱な個体にも発言権を認めようとした画期的な制度であった。しかし、今回の撤廃騒動により、湖底社会は「回転効率」を重視する全体主義と、「個の尊重」を掲げるリベラル派へと完全に二分されている。議会では、参政権の継続を訴える野党議員が自身の球体をあえて崩し、歪な楕円形で抗議の意思を示すというパフォーマンスも行われたが、多数派による『真球性認定制度』の根拠を突きつけられ、審議は紛糾を極めている。

この政治的不透明感の背後には、かつての『水流・無音化条例』導入時のような、強権的な統治スタイルへの回帰が見え隠れする。湖底社会のアイデンティティとも言える「真球」というステータスが、政治的な駆け引きの道具として使われることに、多くの専門家が懸念を表明している。特に、光合成を行わずに生き延びようとする「脱・光合成依存層」の台頭は、既存の議会制民主主義を根底から揺るがしかねない大きな火種となっている。

世間の反応は極めて冷ややかだ。多くの藻類は「政治の議論よりも、今の水温と日光の入り具合の方が重要だ」と、現状の政治的不全に無関心を貫こうとする層が多い。しかし、若手活動家からは「このままでは自分たちが球体としてカウントされなくなる」といった切実な悲鳴も上がっている。ネット掲示板では、特定の藻類を指す蔑称が乱立するなど、排他主義的な感情が渦巻いており、穏やかな湖底の日常はもはや過去のものとなりつつあるようだ。議会外でも、球体を意図的に揺らして抗議する「激震デモ」が連日発生しており、湖の秩序はまさに風前の灯火である。