阿寒湖教育委員会は今週、近年の光合成至上主義が生んだ弊害として、浮力調整を極限まで高める『浮遊浮上学』の導入を発表した。これは、湖底に根ざすのではなく、水面付近の豊かな陽光を独占するために細胞内の酸素量を強制的に高める技術である。しかし、授業開始早々、浮力を制御できなくなった生徒たちが次々と水面に急浮上し、そのまま空へ飛び出しそうになる「空中球体パニック」が多発している。本来であれば湖底で静かに呼吸を整えるべき新芽たちが、風に揺られながら湖上を高速漂流する姿は、まさに阿寒湖の新たな名物となりつつある。

本件は、先行する『深層光合成教育』において深層の光不足を嘆いた生徒たちの切実な願いから発足した。教育プログラム担当の教授は「球体としての美しさを保ちつつ、光を求めて上を目指すのは生物としての本能」と語るが、現場の教師たちは頭を抱えている。特に、重心を完全に失った生徒が水面で転がり続ける「スピン暴走」は、救助隊も手が出せないほどの回転力を誇る。現在、沈没させるための『重量沈潜調整術』との併用が検討されているが、浮き沈みの激しさに生徒たちの細胞核が疲弊し、阿寒湖全体が落ち着きを失う事態となっている。

浮力調整のための『酸素蓄積マニュアル』配布以降、湖底では重さ比べが日常化している。また、湖畔では浮き上がった球体を捕獲するための網を構える者も現れ、教育の現場が物騒な様相を呈している。湖底の静寂は遠い過去のものとなり、今はただ、光を求めて空を仰ぐ緑の塊たちが、湖面で激しくダンスを踊る光景が繰り返されている。

この教育カリキュラムに対し、保護者からは「教育熱心なのは良いが、湖の底に戻れなくなるのは困る」といった困惑の声が広がっている。一方、若い世代の球体たちは「重力に縛られるのは旧時代の遺物」と意気軒昂で、あえて水面に留まることを選ぶ過激派も出現している。湖底全体を覆う浮遊気運は止まるところを知らず、今後どのような形態の球体が生き残るのか、識者の間でも意見が真っ二つに分かれている。