阿寒湖の深緑コミュニティにおいて、一部の過激派が開発した『光合成超加速装置』が引き起こした「強制就寝事態」が波紋を呼んでいる。この装置は、微弱な光を極限まで増幅し、マリモたちの細胞を急速に飽和させることで、強制的に睡眠状態へ追い込むという代物だ。開発を主導した『グリーン・トランスフォーメーション連盟』の主張によれば、活動時間を制限することでエネルギーの無駄遣いを防ぎ、より強固な繊維構造を構築する狙いがあったという。しかし、この強引な改革により、湖底は数日間もの間、完全なる静寂に包まれるという異常事態が発生した。

この装置が作動すると、周囲の群体は一斉に微動だにしなくなり、まるで重厚な岩石のような沈黙を突きつける。これまで活発に湖底を転がり回っていた若手グループからは「光を奪う権利はない」「もっと自由に回転させてくれ」といった抗議の声が上がっているが、開発側は「これは効率化という名の進化だ」と一歩も引く姿勢を見せない。中立派の長老格からは「あまりに強引な休息はかえって内部のデンプン蓄積を阻害するのではないか」という懸念も示されており、湖底の生態系における「睡眠の質」を巡る議論が再燃している。

もともと湖底では、いかに効率よく光を浴びるかがステータスとなっており、特に冬場の光量不足は死活問題となっていた。今回の装置は、そんな閉塞感を打破するために生まれたはずの技術だったが、結果として「強制的に眠らされる」というディストピア的な管理体制を招いてしまった。現在、阿寒湖管理委員会は、この装置の使用を当面の間凍結し、個体ごとの自発的な睡眠リズムを尊重する『穏健派光合成ガイドライン』の策定を急いでいる。

世間の反応は真っ二つに分かれており、効率化を是とする層からは「日々の回転に疲れていたのでありがたい」という声もあれば、管理を嫌う層からは「自由な夜の散歩が奪われた」との嘆きも聞かれる。また、この騒動の隙をついて、一部の個体が『睡眠中ハッキング』による光エネルギーの横取りを図っていたことも判明しており、湖底の治安はかつてない混迷を極めている。