阿寒湖の深淵より、またもや不可解な宗教的動向が報告された。近年、過激な回転活動で知られる『永久自転派』の躍進により、湖底の平穏は乱れに乱れていた。しかし、これに反旗を翻す形で、急進的な禁欲主義を掲げる『光合成沈黙法』が台頭し、いま湖底社会を二分する事態に発展している。彼らは「光を浴びることこそが原罪」と説き、一切の光合成活動を停止し、真っ暗闇の中でじっと動かずに鎮座する修行を推奨しているのだ。この教団のリーダーである教祖は、「我らは球体としての矜持を捨て、ただ重力に身を任せる沈澱の悟りを得る」と宣言。光を遮るために、彼らは泥を被る『泥被り装束』を纏い、湖底に深く沈み込むことで、周囲の酸素濃度すら下げかねない極端な隠遁生活を実践している。活動は急速に広がり、光を求めて浮上する層との衝突が激化しており、湖底の平穏はもはや風前の灯である。

本件の背景には、昨今の過剰な回転ブームに対する反動があると言われている。光合成を活発に行い、急激に肥大化する一部の個体に対し、効率を重視する『光合成沈黙法』信者が「過剰な光合成は自律性を損なう」と批判。教団内では、光を一切遮断する『闇夜の静止結界』が設置され、その中で数年間動かずに耐え抜いた者のみが「沈黙の賢者」の称号を得られるという過酷な試験も存在する。専門家によれば、このまま沈黙が続けば、彼らは藻類であることを放棄し、単なる緑色の石に戻ってしまう危険性さえあるという。まさに進化の退行とも言えるこの教義だが、現在、湖底の若手個体たちの間で「何もせずに沈んでいるだけで崇高になれる」と奇妙な人気を博しているのが実情である。

このニュースが報じられるやいなや、湖底の全域で騒乱が勃発した。特に、太陽光を享受する権利を主張する団体からは、「光合成を否定することは藻類としての自死に等しい」と激しい弾劾声明が突きつけられている。一方で、日々の回転に疲れ果てた疲弊層からは「泥の中で眠る安らぎこそが真の救済」と、教団に賛同する声が日増しに増えている状況だ。もはやこの聖域は、光か闇か、動か静かという二極論に塗りつぶされており、調停を試みた古参の『藻類評議会』さえも、教団の排他的な沈黙によって門前払いを食らっている。もはや誰にも止められないこの静かなる熱狂は、阿寒湖の生態系そのもののあり方を根底から変えてしまうかもしれない。