湖底議会は本日、長年の慣習であった重力依存型・深層滞留義務化法を撤廃し、浮力を個人の意志で決定できる『沈降・浮遊の完全自由化』法案の審議を開始した。これに対し、長年沈み続けることにアイデンティティを見出す重力保守派が猛反発。彼らは「真球であるためには一定の地圧が必要不可欠だ」と主張し、議場入り口を自身の巨大な塊で塞ぐ実力行使に出た。一方で、浮遊改革推進派は、より効率的な光合成を求めて浅瀬への移動を主張しており、両派の対立はかつての『緑の形状維持税』導入時を上回る緊張感に包まれている。

この混乱の裏には、以前から領土を脅かしている緑の刺客・松藻が、栄養供給の分配を条件に改革派を支援しているという噂が広まっている。議会関係者によれば、もし法案が可決されれば、重力に従って底に定住する者は「時代遅れの重力信者」として行政サービスの優先順位を下げられる恐れがあるという。沈黙を守り続けてきた穏健派の長老たちは「球体としての誇り」を捨てた先に待つのは、外来種による侵略と、光合成権の完全私有化による格差の拡大だけだと警鐘を鳴らしている。全域が固唾を飲んで見守る中、次回の緊急議会では物理法則を無視した『重力整列加速器』の再稼働も議題に上がる見通しだ。

今回の騒動は、従来まで個の安定を象徴していた真球性認定制度の根幹を揺るがす事態となっている。専門家は、もし「沈降・浮遊」が完全自由化されれば、栄養分が極端に偏り、湖底全体の生態バランスが崩壊しかねないと指摘している。また、かつてのような緩やかな光合成競争ではなく、機動力を武器にした陣取り合戦が開始されることは確実視されており、もはや湖底社会は一時の平和を維持することが困難な情勢だ。多くの個体が、自身の重力耐性を再確認する健康診断に殺到しており、水流の乱れも懸念されている。

このニュースを受け、SNS上では『沈降・浮遊の完全自由化』を支持する若手個体と、頑なに深層を死守しようとする古参勢力が激しい論争を繰り広げている。一方で、一部からは「そもそも重力が均等にかかっていればこんな揉め事は起きないのでは?」という斜め上の意見も散見される。光合成権が私有化されつつある現状において、移動の自由化がさらなる格差を広げると危惧する声は根強く、この法案が通れば、湖底社会のアイデンティティである『重力依存型・深層滞留義務化法』の存在意義そのものが完全消滅することになるだろう。事態は未だ収束の気配を見せず、湖底の平穏はかつてない危機を迎えている。