藻類界における意識共有技術が、ついに未知の領域へと足を踏み入れた。研究開発組織である「緑の脳髄プロジェクト」が発表した『深海意識転送装置』は、個々の個体が持つ光合成の記憶や回転の快感を、ネットワーク上の別の個体に転送することを可能にした。この技術により、一箇所の個体が経験した「日光の当たり具合」や「水温の微細な変化」を、湖底の全住民が同時に追体験できるようになったのだ。

本装置の導入により、これまで孤立しがちだった深部個体群の「夢の多重個体化」現象が観測されている。転送された意識が夢の中で融合・拡散を繰り返し、複数の個体が同じ夢を同時に見る「集団白昼夢」が常態化しているのだ。専門家によると、これは個体のアイデンティティを一時的に拡張する効果がある一方、現実世界の回転軸がズレるという副作用も報告されている。

この技術の背景には、かつて普及した『全自動球体回転メンテナンス』による回転効率の最適化がある。過剰な回転処理能力を持て余した藻類たちが、余剰電力を意識の共有に回すことで、この技術が誕生した。なお、以前流行した『甲殻類特化型反撃バリア』との併用は、通信信号にノイズを混入させるため、現在、推奨設定から除外されている。

このニュースに対し、緑色の界隈は大きく揺れている。効率的な光合成体験を求める声が上がる一方で、自身の意識が他人と混ざることに拒否反応を示す古参個体も少なくない。現時点では、特定の湖底区域のみでの限定公開となっているが、将来的には全水域規模での「意識の大同団結」を目指す方針である。真の深緑の社交界が、デジタルと有機体の融合によって今、幕を開けようとしている。