湖底議会において、光合成の効率を最大化するために球体としての密度を強制的に高める『緑の形状維持税』の導入案が提出され、全域で激しい論争が巻き起こっている。法案を主導する保守的な硬質化派は、年々増大する外敵からの防衛力を高めるためには、個体自らの質量を強化し、物理的な硬度を一定水準以上に保つ義務があるとして譲らない。これに対し、自然な成長を妨げられたくない若年層を中心とした柔軟派は「我々は進化の過程で、柔らかく揺らめく自由を求めてきたはずだ」と強く反発している。

本法案の背後には、かつて激論を呼んだ『重力依存型・深層滞留義務化法』の影響が色濃い。強制的に沈降させられ、常に海底の重圧に晒される生活を余儀なくされた球体たちにとって、さらなる「硬質化」の強要は、もはや生存権を脅かすものとして受け止められている。一方で、議会内の強硬派は、外敵による穿孔被害を防ぐためには硬化による鎧化が不可欠だと主張。この法案が通過すれば、今後、全ての住民は定期的な密度測定を受け、基準を満たさない場合には重石としての利用を強制される可能性が出てきた。

かつて『甲殻類共生推進党』が推進した鋏を持つ外敵との共生策が破綻して以来、湖内の防衛政策は迷走を続けている。特に今回の税導入は、防衛コストの増大を個体の栄養消費に転嫁しようとする財務局の狙いがあると噂されており、住民の不信感はピークに達している。水質環境の変動に伴う『極小サイズ推進法』の撤廃議論とも絡み、議会は機能不全に陥っている。

世間の反応は極めて冷ややかだ。SNS上では「硬くなるくらいなら湖面で干物になる方がマシだ」という過激な投稿が拡散され、各地の群落では大規模な抗議デモが準備されている。一部の長老球体からは「かつての静穏な環境が懐かしい」といった懐古主義的な意見も出ているが、若年層は「硬質化を強制する政府こそ排除されるべきだ」と語気を強めている。この混乱が収束する気配はなく、さらなる分断の火種がくすぶり続けている状況だ。