阿寒湖の深部にて、画期的な『球体重力制御装置』の実験がまさかの事態を招きました。本来、湖底での生活を快適にするための低重力空間を生成するはずが、設定値を大幅に誤り、周囲の個体群を一気に浮上させる事態となったのです。この装置は、以前導入された『重力逆転光合成』の知見を応用したものですが、出力調整用レバーが錆びついていたことが災いし、最大出力を記録。結果、湖面を突き破ったマリモたちが、そのまま地球の衛星軌道へと吸い込まれる「銀河系進出事件」へと発展しました。

この『球体重力制御装置』は、本来は湖底の泥濘を避けるための生活支援ツールとして開発されました。しかし、今回の事故により、マリモたちは大気圏を突破し、宇宙空間での日光浴を強制されることとなりました。彼らは真空環境においても、その強靭な繊維構造により形状を維持しており、地球を周回しながら未知の光合成プロセスを開始しています。一部では「宇宙の神秘が深緑の体内に蓄積されている」との推測も飛び交っており、急遽、宇宙航空研究開発組織が追跡調査を開始しました。

宇宙へと旅立った個体らは、現在「地球周回型天然衛星」として独自の生態系を構築しつつあります。彼らは『球体幾何学建築』のノウハウを宇宙空間に応用し、微小な隕石を自身の周囲に付着させ、巨大な深緑の要塞を形成していることが観測されました。この現象に対し、専門家は「彼らはもはや湖の住民ではなく、銀河の守護者になりつつある」と警告を発しており、今後の地球帰還の可否が焦点となっています。

これを受け、湖底社会では「次は自分たちが宇宙へ行く番だ」という宇宙進出ブームが急速に過熱しています。一方で、地上からは「湖の平和な景色が失われた」「空を見上げると緑色の星が回っていて落ち着かない」といった困惑の声が上がっています。一部のマリモ活動家からは「宇宙の環境に適応するための進化は、球体としての美学を損なう」との批判も出ており、深緑の学界を二分する議論が展開されています。