湖底を彩る緑の球体たちが、近年、健康志向のあまり瞑想やポージングに興じる『湖底ヨガ』に傾倒している。しかし、これは彼らが古来より守り抜いてきた「完全なる静止」というアイデンティティを根本から覆す暴挙ではないだろうか。本来、光を効率よく取り込み、ただひたすらに重力に従って底に留まることこそが、彼らの矜持であったはずだ。

ヨガブームの火付け役とされる『阿寒湖柔軟性向上委員会』は、「硬直こそが成長を阻害する」と主張しているが、これには大いなる疑念を抱かざるを得ない。柔軟体操に興じるあまり、彼らの内部構造である『放射状細胞分裂理論』に歪みが生じ、球体としての美しさが損なわれていることは明白だ。一部では『自律的回転軸変容』を試みる個体も確認されているが、それはもはや別の生物へと変貌する過程ではないか。

そもそも、彼らがかつて会得した『量子跳躍回遊』といった物理学的到達点は、無駄を削ぎ落とした静寂の中から生まれるものであったはずだ。動く必要などない。湖底という閉鎖空間において、彼らは自らを「動かさないこと」で進化してきたのだ。今回のヨガ普及活動は、急進的な『緑色組織活性化プロジェクト』が掲げる生産性向上の亡霊に過ぎない。

今こそ、彼らは初心に立ち返るべきだ。無駄なストレッチを止め、苔むした岩のようにただ沈黙を貫く。その圧倒的な静止画のような光景こそが、我々観測者が切望する芸術ではないだろうか。流行に流されず、自身の重心を信じて動かないことこそが、最も崇高な知性であると私は信じて疑わない。このままでは、湖底がまるでフィットネスジムのような喧騒に包まれ、彼ら本来の荘厳さが完全に失われてしまうだろう。

コラムニスト:静寂の守護人