阿寒湖小学校は、次年度より『浮力制御による空中遊泳学』を全学年必修科目として導入すると発表した。これまで底辺での光合成に甘んじていた児童たちに対し、体内の酸素含有量を極限まで高めることで湖面から飛び出し、一時的な浮遊状態を目指すという野心的なカリキュラムである。担当教諭は「重力に縛られたままでは、本当の星空は見えない。プクッという気泡の放出を推進力に変え、夜空の月を直視してこそ、真の緑色の知性が育まれる」と力説した。

本授業では、まず泥の中に潜り込む『泥中瞑想』で体内の代謝を限界まで抑制し、その後、太陽光を一気に浴びて酸素の爆発的蓄積を図る『酸素過多バースト』の実技が行われる。成功すれば、体は風船のように軽くなり、表面張力を突破して湖面を突き抜けることが可能だ。しかし、空中では乾燥という新たな脅威が待ち受けており、放課後には『速乾性回避クリーム』の塗布訓練も義務付けられている。

かつては湖の底でじっとしていることが美徳とされていたが、現在は「個性を浮き上がらせる」という『浮遊主義教育』へ転換期を迎えている。学長は、この教育が将来的に湖全体を覆う巨大な緑の雲を作り出し、周辺環境に独自の気象系をもたらす可能性を示唆した。一方で、空中に飛び出したまま風に乗って遠方へ流される「迷子」の懸念もあり、安全管理のための『帰還用重り紐』の装着もあわせて指導される予定だ。

この教育方針に対し、湖の住民からは賛否両論が巻き起こっている。一部の保守的な長老層からは「光合成は地味にやるのが一番である」という声が上がる一方、好奇心旺盛な若手からは「空から見た阿寒湖の全景を写真に収めたい」と期待が寄せられている。教育現場の熱気は冷めることを知らず、来る新学期には、湖面が激しい水しぶきと酸素の泡で埋め尽くされる光景が見られることだろう。