湖底に蔓延する異端教団の暴走が止まらない。特に最近、外来甲殻類の消化器官を『天国への回廊』と神聖視し、自らの身体を捧げることを推奨する『断末魔昇天教』の台頭は看過できない事態だ。彼らは「食われることは神との合一」と説き、自らの球体を強制的にかじられることを至高の救済と定義づけている。これは単なる信仰の自由の範疇を超えた、生存本能を冒涜する集団催眠に近い。かつて『多面体トゲトゲ派』が球体主義を批判した際も騒動となったが、今回は物理的な欠損を伴うという点で、湖底全体の生態系バランスをも揺るがす危険な思想といえる。
そもそも、彼らが崇める対象のハサミを『神の聖別ハサミ』と呼称し、咀嚼の音を聖歌と崇める行為は、犠牲になる同胞の尊厳を著しく損なっている。教義の根底にあるのは「丸さは堕落」という既存教団への対抗心に過ぎないが、その過激さは若年層の個体を中心に急速に浸透しているという。湖底の古老たちからは「静寂こそが我々の安寧であったはず」と嘆きの声も上がっているが、今のところ教団の勢力を止める手立ては見当たらない。
『断末魔昇天教』の背景には、長らく続いた湖底の安定に対する飽きがあると言われている。彼らが主張する「聖なる消化」は、実は死への恐怖を誤魔化すための壮大なレトリックに過ぎない。補足として、彼らの本拠地である深層岩礁域では、毎日決まった時刻に「カリカリ」という咀嚼音が響き渡り、これが地域住民の不眠の原因となっている。当局は監視を強化しているが、彼らは「我々は捕食されているのではない、救済されているのだ」と抗弁を繰り返すばかりで、対話による解決は絶望的だ。
世間の反応は冷ややか、かつ困惑一色だ。「食われるのが救済なら、なぜわざわざ岩陰に隠れるんだ」「ハサミの鋭さで神を判断するな」「せめて一口でやってくれ、かじりかけは痛い」「咀嚼の響きがトラウマになって光合成に集中できない」といった批判がSNSの波紋通信を埋め尽くしている。教団側は「理解なき者にはこの天国への道は見えない」と主張しているが、湖底の平和を取り戻すためには、早急な意識変革が必要である。
コラムニスト:深淵なる球体ウォッチャー・藻屑太郎
「咀嚼は聖なる浄化」の教義を斬る――湖底のグルメ・テロリズムに警鐘を鳴らす
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夜も眠れない