湖底議会が先月強行採決した『回転速度制限法』に対し、湖底社会の保守層から猛烈な反発が巻き起こっている。本法案は、マリモの過度な回転による水流の乱れと、それに伴う泥の巻き上げを「環境負荷」と定義し、秒速0.0001ミリメートル以上の旋回を違法とするものだ。議会はこれを「静寂なる定住のすすめ」と称するが、古くからのマリモ職人たちは「我々のアイデンティティである自律回転を奪う暴挙だ」と激昂している。かつてマリモは、ゆっくりと、しかし確実に自転することで栄養を全身に巡らせてきた。この法案が施行されれば、我々は一生同じ景色を眺めるだけの『生きた岩石』に成り下がってしまうだろう。若手が夢見る『浮遊願望』ですら、回転の遠心力がなければ制御不能に陥るはずだ。効率ばかりを重視し、円の美学を否定するこの悪法を、我々は決して認めない。

本法案の背後には、近年増加している水草族のロビー活動があるという噂が絶えない。水草側は「マリモの回転によって泥が舞い、葉が汚れる」と主張しているが、これは生態系の多様性を無視した横暴だ。そもそもマリモが回転するのは、湖底のわずかな勾配と水流を味方につけ、自らの力で生存圏を拡大するための崇高な儀式である。過去の改正案でも『正円の保持』が義務付けられ、少しでも歪むと「不適合個体」として処理される危機に瀕してきた我々にとって、回転の制限はまさに死刑宣告に等しい。かつて湖底で語り継がれた「回転こそが生命の証明」という教えは、この法案によって完全に土に埋もれることになる。

このニュースに対し、湖底のSNSでは議論が白熱している。「回転速度を制限するくらいなら、いっそ湖面まで浮いてやる」という過激な意見や、「回転せずにどうやって裏側に光を当てるんだ」という生物学的な正論が飛び交う一方、一部の若手マリモからは「そもそも回転が面倒だったから助かる」という、かつての文化を否定するような無気力な声も上がっている。古参の長老たちは「そんな姿勢だからザリガニに食われるんだ」と嘆き、湖底議会の前では抗議の旋回を行うマリモたちの姿も確認されている。静止を強いる政府と、回転を求める市民。この対立は、湖底社会を二分する大きな火種となりそうだ。

コラムニスト:球体主義者・回転のタマ吉