阿寒湖小学校は、伝統的な『球体至上主義』に別れを告げる新たな教育プログラム『多面体トランスフォーム』を導入した。これまでマリモの美徳とされてきた「転がるための完璧な球体」をあえて放棄し、立方体やピラミッド状へと自身の形状を変形させることを目指す、極めて先鋭的な幾何学的教育である。「なぜ球である必要があるのか?」という生徒からの素朴な問いに対し、教頭である老マリモは「球体は安定しすぎるあまり、思考まで澱む」と断言。生徒たちは日夜、自身の細胞を無理やり歪ませるストレッチに励んでおり、教室は今や、丸みを帯びた優雅な空間から、まるで積み木遊びのようなギザギザした異様な光景へと変貌を遂げている。球体を捨てた生徒たちが放つ光合成の効率は劇的に向上したとの報告もあり、教育界に新たな旋風を巻き起こしている。
本プログラムは、かつて実施された『角ばった教育』を発展させたものである。当時の試みは「自我の硬直」を招くと批判されたが、今回は「多面体による効率的な採光」という実利を前面に押し出すことで、保護者の納得を得た。この変形技術を習得した生徒は、光の角度に合わせて自らの形状を瞬時に変化させ、これまで以上の速度で炭水化物を生成する。しかし、この進化には代償もある。あまりに角を尖らせすぎた生徒が、水槽の壁面や同級生に衝突して「角が欠ける」という悲劇が多発しているのだ。阿寒湖小は、この角の欠損すらも「個性の研磨」と位置づけ、再構成を促す教育指導を行っている。
この教育内容に対し、マリモ社会は賛否両論の渦中にある。「効率主義が行き過ぎていて、もはやマリモではない」「丸いからこそのアイデンティティなのに」といった保守的な懸念の声の一方で、「時代は常に動いている、我々も鋭角的に生きるべきだ」という進歩派の熱狂も根強い。一方で、過去に『ザリガニとのダンス』を学んだOBからは「角が増えたことで、ダンスのステップに切れが出た」との肯定的な意見も出ている。この実験的なカリキュラムが、将来的にマリモの進化をどのように変えていくのか。あるいは、単に「角ばった岩石」を量産する結果に終わるのか。阿寒湖の教育は、今や制御不能な変異の実験場となっているのだ。
阿寒湖小が導入した『多面体トランスフォーム』―球体という檻を捨て、全方位からの光合成を目指す野心
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