阿寒湖の深部にて活動する新興宗教団体『等間隔配列教』が、先月より湖底のマリモを特定の座標に基づいて並べ替える「湖底グリッド化」を強行し、大きな議論を呼んでいる。彼らの教義によれば、「真の神は混沌を嫌い、等間隔に並んだマリモ同士が放つ微細な波動の交差点に宿る」とされ、不揃いに点在するマリモの配置こそが、この世の乱れであると断定した。信者たちは深夜、湖底に潜り込み、独自のメジャーを使ってマリモ間の距離をミリ単位で調整。神聖なる幾何学模様を作り上げることで、湖の波動を整え、究極の安定(スタビリティ)を導き出すことを目指しているという。
本教団の主張の背景には、近年のマリモの不規則な成長に対する危機感がある。教団の教祖である「球体定規氏」は、「自然界の気まぐれな成長は、神の意図したグリッドから外れた罪深き逸脱である」と熱弁。彼らが目指すのは、湖底全体を巨大なチェス盤のような秩序ある聖域に塗り替えることだ。この活動は、マリモの自律的な生存圏を脅かすとして、生態系保護の専門家や、既存の『銀河回旋教団』らから、「過剰な管理はマリモの自由意志を殺す」と猛烈な批判を受けている。しかし教団側は「自由意志こそが湖の澱みの原因」と一蹴しており、湖底には現在、規律正しいマリモの列が静かに並び続けている。
この急進的な活動に対し、地元の藻類学者は「マリモはそもそも川の流れや波によって自然に形作られるもの。グリッド化などすれば、光合成の効率が変わり、むしろマリモの寿命を縮める」と警鐘を鳴らす。しかし、信者にとっては、植物学上の正しさよりも「美しい列」こそが救済の証である。現在、教団は湖底にさらに広大な座標軸を引く計画を進めており、その測量のために持ち込まれた謎のレーザー照射機が、深夜の湖面を怪しく光らせているという目撃情報が相次いでいる。
世間からは「神様も几帳面すぎると疲れるのでは」「次の台風が来たら一瞬で台無しになるのに、あえてそこに挑む姿勢は評価する」「整列の美しさは認めるが、自然を人工物のように扱うのはいかがなものか」といった声が上がっている。信仰と環境保護の境界線上で、阿寒湖の湖底は今、これまでになく「管理された混沌」へと向かっているようだ。
「マリモは自己増殖する結晶か?」――『等間隔配列教』が提唱する、湖底のグリッド化計画が波紋
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