阿寒湖の湖底を席巻している「積層型マンション」ブームに対し、古参マリモたちの間で強烈な反発が起きている。「住みやすさ」や「効率」を追求するあまり、先祖代々守り抜いてきた『完璧な球体』の誇りを捨てることは、マリモとしてのアイデンティティ崩壊に他ならない。かつて美しい円形を誇っていた若者たちが、今や角ばった積み木のような集合住宅に身を潜め、湖底の景観は無残なスラム街と化している。この急進的な建築ラッシュは、マリモ界の伝統を根底から揺るがす異常事態であり、今こそ我々は「転がる自由」という本質を取り戻さねばならない。

そもそも、マリモが球体である理由は、波に揺られ、湖底を転がることで全方位から等しく光を浴びるためである。積層マンションに住まう者たちは、この「光の均等摂取」という生存戦略を完全に放棄している。マンションの上階に住む者は日光を独占し、下層階の住民は深刻な光合成不足に陥るという格差社会が、まさに今この瞬間に構築されているのだ。これは「持ちつ持たれつ」の共生関係を誇ったかつての湖底の平和を破壊する、極めて危険な兆候であると専門家は警告している。

本件の背景には、近年の湖水温上昇に伴う「代謝の高速化」が影響しているとの説が濃厚だ。エネルギーの無駄遣いを防ぐため、移動せず密集することで体力を温存しようとする適応進化が、皮肉にも「積層マンション」という奇妙な文化を生んだ。しかし、これは一時的な逃避に過ぎない。冬の訪れとともに湖流が強まれば、接着剤の役割を果たす藻類の結合力だけではマンションを維持できず、一気に崩壊するリスクも指摘されている。かつてあった美しい光景は、もはや幻となるのだろうか。

この過激な建築運動に対し、湖底のSNSでは「レトロ球体回帰派」による抗議デモのハッシュタグがトレンド入りを果たした。若年層の多くは「利便性を捨ててまで球体にこだわる意味がわからない」と冷ややかだが、古老たちからは「角が生えたらそれはもうマリモではない、ただの苔の塊だ」と厳しい批判が飛ぶ。美意識を巡るこの世代間対立は、解決の糸口が見えないまま、湖底の空気をピリつかせ続けている。果たしてマリモたちは再びあの美しい円形を取り戻せるのか、あるいはこのまま四角い墓場へと突き進むのか、全マリモの視線が湖底の隅々へと向けられている。

コラムニスト:球体至上主義者 円形・丸夫