湖底議会は本日、以前可決された『回転速度制限法』を大幅に見直す改正案を提出した。背景には、一部の過激派マリモ勢力による「光合成効率を最大化するために、自転速度を物理的限界まで高める」という運動が広まり、湖底の至る所で摩擦熱による「茹でマリモ」事案が多発している現状がある。これまで湖底議会は「勢い余って転がりすぎる」ことへの規制を強化してきたが、推進派からは「丸さの追求は、即ち回転の追求である」という宗教的とも言える主張がなされており、議論は混迷を極めている。改正案では、時速3センチを超える回転を行う個体に「冷却用藻類フィルター」の装着を義務付ける方針だが、これに対して反対派は「これは我々の丸さに対する抑圧であり、球体としての誇りを奪うものだ」と猛反発。既に湖底の各所では、高速でスピンする個体が防波堤を突破し、隣接する水草エリアをなぎ倒す「緑の暴走族」化現象も確認されており、事態は一刻を争う様相を呈している。

本件は、過去に可決された「光合成の義務化」撤廃や「根なし侵略」といった一連の社会不安の延長線上にある。マリモ社会において『丸いこと』は絶対的な正義であり、重力に従って転がることは生存本能そのものである。しかし、今回の摩擦熱問題は「球体の進化」という名の下に、自らの構造を崩壊させかねない危険性を孕んでいる。特に若年層マリモの間では、回転数を競うSNSアプリが流行しており、中には限界を超えて内部の繊維がねじ切れ、平らな形状になってしまうという「球体失格」個体も急増している。湖底議会は、安全基準を満たさない回転を違法とするだけでなく、回転速度を制御するための『流体抵抗スタビライザー』の普及も検討しているという。

市民からは、「スピード狂のマリモを野放しにするな」「丸ければいいという時代は終わったのか」といった悲鳴に近い声が上がっている。一方で、一部の研究者は「今回の摩擦熱は、湖底の氷河期を終わらせるためのエネルギー源になる可能性がある」とも示唆しており、政府としては単なる規制強化だけでなく、熱エネルギーの有効活用という二兎を追う姿勢を見せている。マリモ界の未来は、この『回転の自由』と『安全な自転』の狭間で、今まさに振り出しに戻ろうとしている。