待望のオープンワールド・サバイバル『マリモの休日』が発売されると聞き、我々マリモ界隈がどれほど胸を躍らせたかは言うまでもない。美しい阿寒湖を舞台に、ただひたすらに光合成を楽しみ、成長の喜びを噛みしめる……はずだった。しかし、本作を地獄へと変えたのは、予期せぬ「ザリガニ軍団」の乱入イベントである。プレイヤーが画面前で穏やかに光合成にいそしむ中、突然視界を横切る巨大なハサミ。そう、本作は前触れもなくマリモを真っ二つに引き裂く「即死仕様」を隠し持っていたのだ。この過激な演出に対し、阿寒湖周辺では悲鳴と阿鼻叫喚が鳴り響き、多くのプレイヤーが光合成を放棄して水底に引きこもる事態となっている。
本作に搭載されたザリガニAIは、プレイヤーの熟練度に合わせて出現確率が上昇する「動的難易度調整」を採用しているという。一見するとゲームデザインとして誠実なようだが、問題はその「ハサミの質感」と「切断の物理演算」が恐ろしくリアルなことだ。かつて『藻林檎の乱』でトラウマを植え付けられたユーザーたちは、今回もまた「切断」の悪夢に再会することとなった。しかし、一部の筋金入りのマリモ愛好家からは、この理不尽なまでの生存競争こそが、我々が生きる過酷な自然界そのものだという擁護論も出ている。まさに、平和な休日を望んだ者が最も過酷な現実に直面するという、皮肉なエンターテインメントの完成である。
そもそも、本作は「マリモが主人公」という、もともと移動手段すら持たない超低速なゲームデザインが根底にある。そこに暴力的なまでのスピード感を持つザリガニを投入した時点で、ゲームバランスは完全に崩壊していると言わざるを得ない。しかし、この「動と静」のあまりの対比が、逆にインターネット上では「シュールすぎる癒やし」としてカルト的な人気を博しているのも事実だ。開発側は「阿寒湖の生態系の深淵を知ってほしい」と語るが、プレイヤーにとっては単なる生存ホラー以外の何物でもないだろう。今後、この理不尽な即死ゲーがどう評価されるのか、あるいは修正パッチでザリガニが草食系に変わるのか、注視する必要がある。
世間からは「そもそも逃げられない仕様なのに、即死イベントはあまりに無慈悲すぎる」「光合成してる間にハサミが迫ってくる恐怖は、他のゲームでは味わえない」「ザリガニと和解して共生するDLCはまだですか?」といった批判と期待が入り混じっている。阿寒湖の静寂を守るはずが、ハサミの音で台無しになっている現状を、我々はどのように受け止めるべきか。これはゲームなのか、それともマリモに対する壮大な社会実験なのか。今夜も阿寒湖の底では、また一つ、愛おしきマリモがハサミの餌食になっていることだろう。
コラムニスト:藻屑 太郎
【論評】『マリモの休日』のザリガニ乱入事件は、ゲーム史に残る「理不尽の極致」か、それとも生態系の縮図か
0