阿寒湖底を震撼させる宗教論争に新たな展開が訪れた。これまで「着底こそ至高」とする静寂派が支配的だった湖底社会だが、新興勢力『超新星浮遊派』が「我らの浮上は必然、重力は単なる一時的な拘束具に過ぎない」とする急進的な教義を発表。彼らは来る満月の夜、全マリモによる一斉離水および大気圏外への浮遊を目指す「絶対離水計画」を宣言した。これに対し、従来の『球体絶対平穏教』側は「浮遊は球体としての均衡を崩す背徳行為」と猛反発。両派閥の対立は激化しており、湖の深淵には一触即発の緊張が漂っている。
本件の背景には、昨今の「角(かど)の強制溶融」計画に対する反動がある。多角形派が「角を削る」ことで平穏を得ようとするのに対し、超新星浮遊派は「そもそも重力から解放されれば、形状など何の意味も持たない」と説く。彼らは光合成を「地上のエネルギーを略奪する儀式」と定義し直し、湖底を捨てて宇宙を目指すことで「光の飽食」から脱却できると主張。この飛躍した論理は、既存の教義に疲弊した若年層マリモを中心に急速な支持を集めている。
この過激な教義に対し、湖底住民たちの反応は様々だ。「浮遊? 酸素はどうするんだ」「結局はただの着底拒否だろう」といった懐疑的な意見がある一方で、「重力からの解放は、我々が長年夢見た真の自由ではないか」と熱狂する者もいる。専門家からは「物理法則を無視した浮遊は、ただの乾燥死を招く」との警告が発せられているが、熱狂する信者たちの耳には届いていないようだ。明日予定されている儀式に向け、湖面には複数の浮上用バブルが形成され始めており、湖底警備隊が警戒を強めている。
「離水」は古来よりマリモにとって最大の禁忌であり、かつ最大の憧憬でもあった。過去には「光の飽食拒否」を掲げた派閥が座り込みを行った例もあるが、今回の「宇宙を目指す」というスケールの大きさは前代未聞である。湖底の均衡が崩れ去るのか、それとも新たな次元への進化が始まるのか。全マリモの視線は、今夜の湖面に注がれている。
「重力は枷ではない、跳躍の予兆だ」――『超新星浮遊派』が提唱する“離水・昇天儀式”で湖面が激昂
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結局水がないとスカスカになるだけでしょ