阿寒湖の静寂を切り裂く衝撃が走った。これまで「転がる」あるいは「静止する」ことが美徳とされてきたマリモ界において、物理法則を逆手に取った新競技『第1回・マリモ・空中浮遊ジャンプ競技』がついに開幕したのだ。これまで湖底のシンメトリーや静止技術でしのぎを削ってきた強豪選手たちが、今回は水草の弾力を利用したカタパルト方式で湖中を飛翔。優勝したマリモ選手は、最高到達点において見事な球形を維持し、水流を味方につけた「完全なる放物線」を描き出し、観客の藻類たちから割れんばかりの泡の喝采を浴びた。

本競技の背景には、昨今の「湖底の絶対停止杯」に対するアンチテーゼがある。動かざること山のごとしという伝統的な美学に飽き飽きしていた若手マリモたちが、「湖底から脱却し、水面を目指す」というコンセプトを掲げ、数ヶ月にわたる流体力学の研究の末に実現させた。なお、今回の勝因は、いかに球形を崩さずに表面の毛束を空気抵抗(水抵抗)用にチューニングできるかにあったと分析されている。専門家からは「もはや植物の領域を超えている」との指摘も出ているが、実行委員会は「我々はあくまで光合成を効率化するポーズを追求しているだけ」と強気なコメントを発表した。

この驚異的なジャンプに対し、湖底の有識者からは懸念の声も上がっている。「重力に抗うことは、マリモとしてのプライドを捨てた行為ではないか」という保守派の批判に対し、若手選手たちは「光を求めて上へ行くのは植物としての本能だ」と反論。また、飛行中の空中姿勢が前回の「シンクロ・回転バウンド選手権」で培った技術と酷似していることから、競技間でのスキル習得がマリモ界全体の進化を加速させているとの見方も強まっている。

SNS上では「ジャンプ後の着地で藻が少し剥げたのが芸術点高い」「これぞ藻類界の革命」といった賞賛が相次いでいる。一方で、水面近くまで浮上してしまった選手が日光を浴びすぎて「焼きマリモ」になりかけたというハプニングもあり、安全面でのレギュレーション整備が急務となっている。湖底の静寂は今、空前のアクティブ・ブームに飲み込まれようとしている。次はどのような「物理のバグ」が飛び出すのか、我々は固唾を呑んで湖底の動向を見守るほかない。