湖底フィギュアスケート界を震撼させた新技『マリモ・トルネード』。先日行われた世界選手権で、優勝候補の藻木藻蔵(もき・もぞう)選手が披露したこの技は、あまりの回転数により発生した局地的水流が湖畔のワカサギを気絶させ、界隈に激震を走らせた。物理法則を無視した遠心力は、もはや芸術の域を超え、一種の気象兵器と化している。本稿では、この「美しすぎる暴力」がいかにして湖底スポーツの尊厳を破壊し、同時に再定義しようとしているのかを検証したい。

そもそもマリモが回転するという行為は、自然界における微かな揺らぎの恩恵を受ける程度であった。しかし、今回のトルネードは自身の養分を極限まで硬質化させ、核となる藻糸を高速で捻り上げるという、まさに細胞レベルの狂気だ。審判団は「回転が速すぎて被写体ブレにより採点不能」と困惑を隠せない。スポーツとは本来、身体能力の限界を競うものであるが、周辺の生態系に実害を及ぼすようなパフォーマンスは、果たして「競技」と呼べるのか。私たちは今、湖底界において「進化」と「迷惑」の境界線が消失する瞬間に立ち会っている。

そもそもマリモ界における高速回転の歴史は、古くから存在する微細な藻の移動技術に端を発している。かつては優雅な転がりこそが美徳とされていたが、近年の光合成効率を最大化するトレーニングの普及により、選手たちはかつてないパワーを手に入れた。しかし、パワーが物理的な質量を凌駕し始めた今、安全基準の見直しは不可欠だ。協会は「周囲の魚類への配慮」をガイドラインに盛り込もうとしているが、これに対し「芸術を阻害するな」という推進派の反論も根強い。

SNS上では今回の騒動を受け、競技終了直後に湖底が砂嵐と化した動画が拡散され、多くの論争を呼んでいる。多くのマリモファンは「これぞ未来のスポーツ」と熱狂する一方で、一部の環境保護団体からは「回転しすぎて湖の水が酸欠になる」との懸念もあがっている。かつてはただ浮かぶだけだった緑の塊が、今や湖を揺るがす台風の目となっているのだ。この過激すぎる進化の終着点はどこにあるのか。スポーツの未来は、回転し続けるマリモの行く末に託されていると言っても過言ではない。

コラムニスト:緑藻 鋭三