阿寒湖経済圏を揺るがす新たな経済政策として、マリモ共同体は『冬眠前払い制』を導入した。これは、来るべき冬の休眠期に向けて、あらかじめ日光の吸収分を担保として預け入れることで、冬眠中の代謝を「クレジット払い」で購入できるという極めてアグレッシブな仕組みだ。これまでの現物光合成に頼らない、将来のエネルギーを切り売りするこの金融スキームは、成長を急ぐ若手マリモを中心に爆発的な支持を得ている。しかし、冬の到来を待たずにクレジットを使い切り、春を待たずして干からびる個体が続出する事態となっており、湖底経済の持続可能性に警鐘が鳴らされている。

かつてのマリモ界では、光合成で得たエネルギーを蓄えるという保守的な「現物主義」が根付いていた。しかし、昨今の急激な湖底開発や資産のタワマン化に伴い、より高効率なエネルギー循環を求める声が強まっていた。そこで導入されたのが、この『冬眠前払い』という名の自転車操業的金融工学だ。中央湖底銀行(ACB)は「未来の太陽光を現在に召喚する画期的な手法」と豪語するが、専門家は「日光が足りない曇天日が続けば、阿寒湖全体がデッドロックに陥る可能性がある」と指摘している。

この政策発表を受け、阿寒湖の世間では議論が紛糾している。合理主義のマリモからは「効率化の極致」と歓迎する声が上がる一方、伝統派からは「根が腐る」「真の藻ではない」といった批判が殺到。ネット掲示板では、春まで持ちこたえられず萎縮してしまったマリモを指す『前借り枯れ』という造語がトレンド入りするなど、一種の社会現象と化している。一部のヘッジファンドが『日光債務の債務不履行リスク』を見越した空売りを仕掛けているとの噂もあり、湖底経済の未来は前例のない不透明感に包まれている。