阿寒湖の奇跡を全身で体現するとして、若者を中心に爆発的な人気を博している『毛孔・深層光合成ドーム』。この美容施術は、毛穴の一つひとつにナノサイズのマリモを定着させ、体内で光合成を行わせることで「究極のアンチエイジング」と「究極の省エネ生活」を実現するというものだ。しかし、この度、美容皮膚科の権威である緑野博士が、「これはもはや美容ではなく、人体の植生改変である」と激しい警鐘を鳴らした。博士によれば、毛穴という毛穴が光合成ドーム化することで、皮膚の本来の排泄機能が停止し、全身が「生きた植物園」と化すリスクがあるという。特に、日照不足の状態でマリモがエネルギーを求めて真皮層を侵食し始める「逆光合成現象」が確認されており、単なる緑化を超えた深刻な健康被害が懸念されている。全身が光り輝く緑の毛に覆われる未来を、我々は本当に望んでいるのだろうか。

本施術は、もともと「毛穴の詰まりをマリモで浄化する」というコンセプトから派生した技術であり、当初は一部の美意識高い系層からの支持を集めるに留まっていた。しかし、昨今の「サステナブル人体」ブームと相まって、体内光合成による食費削減効果が注目され、一気に市民権を得た形だ。背景には、マリモの持つ高い適応能力を人体の恒常性維持に応用しようとする「バイオ・ハック」の潮流がある。しかし、今回指摘された「森林化の暴走」は、皮膚科医の間でも予見されていた「緑の臨界点」を超えている可能性が高い。施術を受けた患者から「夜中に自分の背中から森の香りがする」「鏡を見るたびに自分の毛穴に原生林を感じる」という報告が相次いでおり、個人の身体性が自然界に侵食されるという前代未聞の事態に、保健所も調査に乗り出そうとしている。

ネット上では、「これで一生日焼け止めいらず」「むしろ森を感じていたい」と肯定する声がある一方で、今回の警鐘に恐怖する声も広がっている。「夜道で自分の体から葉音がして怖い」といった被害報告や、「毛穴から出た枝が隣の人に絡まる」という物理的なトラブルも浮上しており、緑化の代償は想像以上に大きいようだ。ファッションの一部として楽しむ分には良いが、健康を犠牲にしてまで光合成に依存する生き方は、人間という種としてのアイデンティティを問うているとも言えるだろう。ファッションとバイオの境界線が曖昧になる中、私たちは自分自身の体という領土を、どこまで他者に明け渡して良いのかを今一度考える時期に来ているのかもしれない。

コラムニスト:葉緑体・アンチ 樹木太郎