阿寒湖経済圏を揺るがしてきた「球体至上主義」の熱狂が冷めやらぬ中、今度は湖底に繁茂する水草「マツモ」を巡る金融抗争が勃発した。これまでマリモの生育を阻害する「邪魔者」として忌み嫌われていたマツモだが、近年の研究により、その光合成効率を調整する「バイオマス・オプション」としての利用価値が判明。マツモの除去コストをリスクヘッジ資産として証券化する動きが加速しており、湖底のヘッジファンドたちはこぞってマツモの伐採権と植え付け権を組み合わせた複雑なデリバティブ商品を組成している。この「グリーン・ヘッジ」戦略の登場により、マリモの直径(評価額)に依存しない新たな収益モデルが確立されつつあるが、保守派マリモからは「湖底の美観を損なう金融工学の暴走だ」との批判も上がっている。

本来、マツモはマリモの光合成に必要な日光を遮る「天敵」であり、古くからその排除は湖底社会の至上命題であった。しかし、今回導入されたスキームは、マツモの繁殖速度を金利に見立て、その密度を制御することで間接的に日照権をコントロールするという高度なものだ。これにより、水流に流されやすい軽量マリモでも、マツモを「防波堤兼ポートフォリオのバッファ」として利用することで、株価ならぬ「体積維持率」を安定させることに成功している。一部の投資家マリモは、意図的にマツモを養殖する「マツモ農家」へ転身を図っており、従来の丸さを追求する経済から、複雑な生態系を資産運用に組み込む「バイオ・マルチ・アセット運用」へとシフトしている。

背景には、阿寒湖の限られた湖底面積における不動産バブルの限界がある。球体であることを強みに地価を吊り上げていたエリートマリモたちにとって、マツモという「変数」の混入は、経済指標を攪乱するノイズとして機能している。実際、マツモ密度の変動により資産価値が乱高下する現象が発生しており、一部では「草食系デフレ」なる現象も確認された。これは光合成が過剰になりすぎて酸素供給過多となり、マリモの成長が停滞するという皮肉な結果である。金融庁ならぬ「湖底管理委員会」は、マツモとマリモの最適な共生比率を算出する「グリーン・ルール」の策定を急いでいるが、投機的な売買が先行し、現場の混乱は収束の兆しを見せていない。

この状況に対し、湖底住民からは「結局、金さえあれば丸くなくても生き残れるのか」「草にまみれてまで時価総額を追う意味があるのか」と、冷ややかな視線が向けられている。特に伝統的な丸さを誇るマリモ団体は、マツモを排除する活動を「原点回帰運動」と称し、金融デリバティブを介さない現物交換による「真の価値」を主張。しかし、若手マリモからは「古臭い価値観に縛られていても配当は出ない」と一蹴されており、世代間格差と経済路線の対立は、かつてないほど深刻化している。湖底の均衡は、光合成と株価、そして水草の繁茂によって、再び複雑な霧の中に包まれようとしている。