核酸とはどんな栄養か – 食品に含まれる核酸の健康への影響

RNAの構造

核酸と呼ばれる成分を摂取できるサプリメントなどの健康食品が販売されています。

生物学や遺伝学に馴染みのない方は、核酸がどんなものか想像するのは難しいかもしれません。

この記事では、核酸についての基本的な知識と核酸がどのように吸収されるかについて紹介します。

核酸とは

まず、核酸には以下の2種類があります。

「DNA」と聞けば、遺伝に関わるものということをご存知の方は多いかと思います。

今回は、物質としてのDNAやRNAがどのようなもので、どのような働きを持つかの概要を紹介します。

DNA(デオキシリボ核酸)について

DNAは、デオキシリボヌクレオチドと呼ばれる物質が鎖のように繋がったものです。

デオキシリボヌクレオチドとは、リン酸デオキシリボース)、核酸塩基の3つが結合してできる、以下のような化学構造を持つ物質のことです。

デオキシアデニル酸の化学構造

(デオキシリボヌクレオチドのひとつであるデオキシアデニル酸の化学構造)

これは「アデニン」という核酸塩基を持つデオキシリボヌクレオチドの「デオキシアデニル酸」です。

核酸塩基の種類によって、デオキシリボヌクレオチドは以下の4種類に分類されます(それぞれの詳細はリンク先のページをご覧下さい)。

これらを長く連ねた一本の長い鎖がDNAで、これが適切な塩基が繋がるように2本の組になったものが、本などでよく登場するDNAの二重らせん構造です。

2本のDNAによる二重らせん構造

出典: 技術評論社 桂義元 免疫はがんに何をしているのか? 見えてきた免疫のメカニズム 2016/12/25

図中では核酸塩基がアルファベットで表されています。例えば、アデニンはAです。

このDNAの一部は遺伝情報(身体を構成するタンパク質の作り方)を持つ遺伝子の本体です。遺伝子の部分はDNA全体の1.5%程度で、DNAの全てが遺伝情報を持つわけではないとされます。

上記の4種類のデオキシリボヌクレオチド(が持つ塩基の種類)の並び方によって、どのアミノ酸を利用してタンパク質を作るかが決定されます。

人間の食品となるほとんどの生物の細胞には必ずDNAが含まれています。

さらに詳しいDNAの説明は以下のページを御覧ください。

DNA – 健康用語WEB事典

RNA(リボ核酸)について

RNAは、リボヌクレオチドと呼ばれる物質が鎖のように繋がったものです。

リボヌクレオチドとは、リン酸リボース)、核酸塩基の3つが結合してできる、以下のような化学構造を持つ物質のことです。

アデニル酸の化学構造

(リボヌクレオチドのひとつであるアデニル酸の化学構造)

一見似ていますが、DNAとの違いは「デオキシ」ではない糖が構成要素となっている点です。デオキシとは「ヒドロキシ基(-OH)の1つが還元されて水素原子(-H)に置き換わった」という意味です。

したがってデオキシリボヌクレオチドから変わった部分は、化学構造の右下の部分が -H ではなく -OH になったところです。

(先ほど紹介したデオキシアデニル酸の化学構造を見てみると、右下の部分には何も結合していないように見えますが、これは -H が省略されています)

RNAも結合している核酸塩基によって以下の4種類に分けられます。

RNAはDNAから作られます。DNAはタンパク質の作り方の情報(設計図)ですが、実際にタンパク質を合成するために働くのは、DNAから作られるRNAです。

RNAはその役割ごとに様々な種類(mRNA、tRNA、rRNAなど)に分類されます。詳細は以下のページを御覧ください。

RNA – 健康用語WEB事典

これも、生物を構成する各細胞内に含まれています。

核酸はほとんどの食品に含まれている

核酸のことを初めて聞く方には新しい栄養素の様に聞こえてしまうかもしれませんが、前述の通り、核酸は人間の食品となるような生物の細胞に含まれています。

したがって、動物(肉類)や植物(野菜)には間違いなく核酸が含まれており、通常の食生活をしていれば日々摂取している物質です。

肉類などにはタンパク質と結合した形(ヌクレオプロテイン、核タンパク質)として豊富に含まれているとされます。

ちなみに、グアニル酸はそれ自体が椎茸などの旨味成分です。イノシン酸IMP)と呼ばれるリボヌクレオチドは核酸(DNAおよびRNA)の構成物質ではありませんが、これも鰹節などの旨味成分です。

アデニンやデオキシグアニル酸(グアニル酸)の塩基であるのグアニンはプリン体の一種でもあります。

プリン体は,プリン骨格を持つ核酸,ヌクレオシド,ヌクレオチド,塩基の総称であり,生きている細胞では主に核酸やATP等として,食品中では核酸や旨味成分(鰹節に含まれるイノシン酸(IMP),しいたけに含まれるグアニル酸(GMP),酵母RNA分解物から発見されたキサンチル酸(XMP))として含まれている.これらのプリン体は腸管で吸収されて体内を循環する過程でプリン代謝経路によって最終的に尿酸となり,尿中と便中に排泄される.
帝京大学薬学部臨床分析学研究室 帝京大学医学部内科学講座 食品中プリン体含量および塩基別含有率の比較

核酸はどのように吸収されるか

様々な食品に核酸が含まれていることはわかりましたが、問題はその核酸が吸収されて身体で利用されるかどうかです。

実際に身体に取り込まれるのは、核酸の構成単位であるヌクレオチド(DNAの場合)またはヌクレオシド(RNAの場合)まで分解された状態で、核酸そのままの形では吸収されないようです。

Q:核酸って食べ物から補給できるんですか?
A:細胞を含む食品には当然核酸が含まれています。ではそれがヒトのDNAやRNAに使われるのでしょうか。
食品中の高分子のDNAは消化管から吸収されることはありませんし、仮に吸収されたとしてもゲノムに組み込まれることはありません。問題はヌクレオチド、ヌクレオシドに分解されたものがDNA、RNAの合成に使われるかという点です。少なくともヌクレオシドにまで分解されると小腸から吸収されます。
しかし実際摂取したヌクレオシドで組織の核酸に取り込まれるのはほんの一部であることがわかっており、ほとんどはde novo(新規)生合成経路でアミノ酸からヌクレオチドは作られます。この部分の詳細は生化学で学びます。
ですから核酸サプリメントに過大な期待はできません。
北里大学 分子遺伝学 講義 Q&A集

ヌクレオシドとは、ヌクレオチドからリン酸を取り除いた部分のことです)

体内のDNAやRNAの構成要素は、その多くが新しく作られるため、食品として取り込んだものが使われるのは限定的とされます。通常はアミノ酸から新しく合成されます。利用されるのは吸収量全体の5%程度とする文献もあります。

参考: Eating DNA: Dietary Nucleotides in Nutrition Posted on April 9, 2014

しかし、全く利用されないわけではなく、ヌクレオチドが持つ核酸塩基はサルベージ経路で核酸を合成する際に利用されるようです。

サルベージ経路とは、体内で物質を合成する方法のひとつで「ある物質の分解物を利用して再び分解される前の物質を合成する方法」です。

核酸は最終的にリボースと遊離塩基へと分解される(核酸の異化代謝)。遊離塩基の大半は排泄されるが,一部は再利用され,核酸のサルベージ(salvage)合成経路でヌクレオチドへと変換される。…
一方,リボース部分は糖の代謝経路に入り利用される。
福岡大学 理学部 機能生物科学研究室 核酸の異化代謝
福岡大学 理学部 機能生物科学研究室 ヌクレオチドの生合成

つまり、核酸を食品から摂取した場合、利用できるのはそれに含まれている糖と核酸塩基の一部です。

特に、デオキシアデニル酸のアデニンやアデニンとリボースが結合したアデノシンは吸収されて再利用されやすいことが報告されています。

評価したプリン体は、プリン塩基5種、ヌクレオシド4種、ヌクレオチド9種である。透過試験の結果、アデニン、ヒポキサンチンなどの塩基は、比較的透過しやすいことが明らかになった。ヌクレオチドやヌクレオシドは代謝を受けやすく、透過液中に代謝物が経時的に増加した。プリン代謝動態試験の結果、アデニンやアデノシン、イノシン負荷により、細胞内ATPレベルが大きく増加することから、負荷されたプリン体は主に、細胞内への取り込み後サルベージされ、再利用されていると考えられる。…
プリンリッチ野菜類に含まれるアデニンなどのフリー塩基は、細胞内でサルベージされやすいこと、また、アデニンそのものとして吸収されるため、血清尿酸値上昇につながりにくいことが示唆された。
KAKEN — 研究課題をさがす | 食事に由来するプリン体の体内動態の解明と高尿酸血症予防への応用 (KAKENHI-PROJECT-15K16238)

このように、摂取したDNAやRNAは分解されていますので、そのまま自分の遺伝子となるようなことはありません。

核酸の健康への影響

成人の場合は体内で合成されるため食品からの摂取は必要ではありません。しかし、乳幼児は合成量が十分ではないため、母乳に多く含まれる核酸を必要とするようです。

また、腸内の細胞に働き、ヘルパーT細胞を活性化することによって免疫力を高める効果が報告されています。

ヌクレオチドや核酸は生体内で合成されるため,成人には必須でない.しかし,急速に成長する新生児の場合,ヌクレオチドは生体内の合成だけでは十分でない.実際,母乳は核酸を100 ml当たり10-70mg含み,乳児の必要量を満たしている.…
ヌクレオチドや核酸には,腸管上皮細胞の活性促進(18),感染防御作用(9),免疫賦活作用(11)などの生理作用が知られている.免疫賦活作用に関しては,ヌクレオチドや核酸は,B細胞よりT細胞(11),特にヘルパーT細胞(10)の活性を高めることが報告されている.
ヌクレオチドが免疫系に与える影響 永渕真也 明治乳業(株)研究本部 食機能科学研究所

おしまい

DNAやRNAを含む食品を摂取しても、それらがそのままDNAやRNAとなるわけではないため細胞の老化防止などとは無縁のようです。

しかし、意外にも腸内の防御作用を高める効果が確認されています。

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