人工甘味料のアスパルテームは安全か危険か – 信頼できる情報源から検証

人工甘味料低カロリー甘味料高甘味度甘味料とも呼ばれます)の一つである「アスパルテーム」について検索エンジンで調べてみると、上位の方にアスパルテームは健康を害する危険な物質であるという内容の記事が表示されます。

アスパルテームを危険視するサイト

アスパルテーム以外の人工甘味料(スクラロースやアセスルファムK)についても似たような記事が数多く存在します。

しかし、これらのページの内容をよく見てみると、参考文献が公的機関・学術機関の発表ではなかったり、全く出典が示されていないものが多いことに気付きます。さらに、有害となるとされる成分の厳密な量や代謝過程を無視して危険視する内容のものもあります。

危険性を指摘するのであれば、その原因物質は何で、どのように人体に悪影響を与えるのかを明確にしなければ、ただ不安を煽るだけになってしまいます。

今回は、アスパルテームがどんな物質で、体内でどのように代謝されるのかという点や、今までどのような試験を経て甘味料として承認されたかを政府機関や学術機関の情報から紹介します。

アスパルテームとはどのような物質か

アスパルテーム(aspartame)は、以下の化学構造を持つ物質です。分子式は C14H18N2O5 です。(参考3

アスパルテームの化学構造

化学名は N-L-α-アスパチル-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル(N-L-alpha-Aspartyl-L-phenylalanine 1-methyl ester)です。

1965年に、胃潰瘍に対する新薬の開発過程で偶然発見されました。(ここでは発見の歴史については割愛します。詳しくは 参考2 をご覧ください)。

長い名前ですが、これはアスパルテームを構成する物質の化学特性を全て含めた場合の呼び名になります(NやLなどは省略される場合があります)。(参考1、参考2

詳しくは後ほど紹介しますが、この名前からアスパルテームを構成しているアミノ酸の種類などを知ることができます。

アスパルテームの常温における特性は、白色で無臭の結晶状の粉末です。スクロース(砂糖)の約200倍の強い甘味を持つとされます。特に酸性の水に溶けやすく、最大で1mLの水に20mg(pH2.2で25℃)、最小で1mLの水に13.5mg(pH5.2で25℃)が溶けます。(参考3、参考7

アスパルテームのカロリーは、砂糖と同じく4kcal/gですが、少ない量で砂糖と同じ甘さとなるため、実質低カロリーと言えます。

アメリカでは1981年、日本では1983年に、甘味料として食品へ使用することが許可されています。現在では約60カ国が使用しているとされます。(参考4

アスパルテームの構成成分とそれらの代謝

アスパルテームの化学名が「N-L-α-アスパチル-L-フェニルアラニン 1-メチルエステル」であることを先ほど紹介しました。

これは、アスパルテームが「どのような物質がどのような化学結合で繋がって作られているか」を示しています。大まかに分解すると、以下の3つの構成要素からなります。

  • アスパラギン酸
  • フェニルアラニン
  • メチル(メチル基)

アスパルテームは,食品中や生体中に見られるL−アスパラギン酸とL-フェニルアラニンの2種のアミノ酸より成り立っている。砂糖同様の4kcal/gの熱量を有するが,食品に使用した時は,砂糖の約200倍の甘味度をもつため,実質,低カロリー甘味料といえる。また,歯垢形成能がなく,さらに,口腔内歯垢下での酸の生成もないことが認められており,虫歯の原因とはならない。
CiNii 論文 –  清涼飲料水中のアスパルテームに関する研究

ちなみに、アスパルテームの化学構造を書く問題が入試問題になったこともあります。

人工甘味料アスパルテームは砂糖の200倍の甘みを持つが、これはアスパラギン酸のカルボキシル基とフェニルアラニンのアミノ基がペプチド結合し、フェニルアラニンのカルボキシル基にメチル基がエステル結合した、ジペプチドのメチルエステルである。アスパルテームの構造式を書きなさい。
徳島文理大学理工学部 ナノ物質工学科 微生物工学講座 平成19年度前期試験解説

以上より、アスパルテームの構成成分は、主に2つのアミノ酸(アスパラギン酸フェニルアラニン)であることがわかります。

問題は、アスパルテームが代謝(分解)された場合、これらの物質がそのまま現れるのかという点です。アミノ酸はタンパク質を構成する物質であり、アスパルテームがそのままこれらのアミノ酸に変わるのであれば、危険はないように思えます。

調べてみると、実際には、以下の3つの物質に代謝されることがわかりました。(参考2、参考5

  • フェニルアラニン(50%)
  • アスパラギン酸(40%)
  • メタノール(10%)

2つのアミノ酸に加え、メチル基がヒドロキシ化(-OHを得ること)されたメタノール(CH3OH)も生成されます。

メタノールの化学構造

メタノールはアルコールの一種であり、お酒に含まれるエタノールよりも強い毒性を持ち失明の原因となる物質ですが、通常摂取される量のアスパルテームから生成される程度のメタノールでは健康上の問題にはならないとされます。

むしろ天然の果物を食べたときに体内で生成されるメタノールの方が多いとされます。

In the body, aspartame is broken down into phenylalanine, aspartic acid, and methanol. Methanol can be toxic in high amounts, but the amounts that result from the breakdown of aspartame is lower than with many “natural” foods. For example, drinking a liter of diet soda would lead to consumption of 55 milligrams (mg) of methanol, as compared to as much as 680 mg of methanol from a liter of fruit juice.

(訳)
体内では、アスパルテームはフェニルアラニン、アスパラギン酸、そしてメタノールに分解される。メタノールは多量摂取による毒性があるが、アスパルテームの分解によって生じる量は多くの「天然」の食品よりも少ない。例えば、1リットルのダイエットソーダからは55mgのメタノールが生成されるが、同じ量のフルーツジュースからは680mgのメタノールが生じる。
American Cancer Society – Aspartame

トマトジュースは、リンゴジュースの4倍、ぶどうジュースの2倍のメタノールを生成します。現在市販されている基準を満たす量のアスパルテームが使用されているソフトドリンクは、だいたいリンゴジュースと同じくらいのメタノールを体内で生成します。(参考2

この事実から考えると、アスパルテームから生成されるメタノールを気にする必要はないと言えます。、

フェニルアラニンやアスパラギン酸の摂取量が問題にならないかと言いえば、タンパク質を豊富に含む他の食品の安全性を考えてみれば明らかであると言えます。ただ、アスパラギン酸は必須アミノ酸ではないため、大量に摂取するのは問題です。とはいえ、大量に摂取すると危険なのは全ての栄養素に言えることです。

アスパルテームの安全試験とADI

FDA(アメリカ食品医薬品局)およびEFSA(欧州食品安全機関)はアスパルテームの影響を調べる数百以上の試験を実施しています。

その結果、現在のところ、アスパルテームを有害とする有力な根拠は得られていないとされます。

Considering results from the large number of studies on aspartame’s safety, including five previously conducted negative chronic carcinogenicity studies, a recently reported large epidemiology study with negative associations between the use of aspartame and the occurrence of tumors, and negative findings from a series of three transgenic mouse assays, FDA finds no reason to alter its previous conclusion that aspartame is safe as a general purpose sweetener in food.

(訳)
アスパルテームの安全性に関する数多くの研究の結果(以前行われた発がん性陰性とする5つの研究、近年報告された大規模な免疫学的研究によるアスパルテームの腫瘍性の否定、マウスの遺伝子への影響の陰性)を考慮すると、FDAはアスパルテームが一般目的の甘味料として安全であるという結論を撤回する理由は見つけられなかった。
Food Additives & Ingredients > FDA Statement on European Aspartame Study

DNA損傷や発がん性、脳神経などの影響の試験でも、問題は確認されなかったと発表されています。(参考8

国内では、アスパルテームの一日許容摂取量ADI)は 2344mg/日(約2g) に設定されています。ヨーロッパでは体重1kgあたり40mgとしており、体重60kgの人であれば日本の基準とほぼ同じです。(ただし、フェニルアラニンが蓄積する病気であるフェニルケトン尿症の患者は例外です)。(参考6、参考7

ADIとは、生涯にわたって毎日摂取しても、人間の健康に悪影響を及ぼさない量のことです。

平成23年の厚生労働省による調査では、一人当たりのアスパルテームの摂取量は 0.019mg であり、ADIを大きく下回る数値です。(参考6

実質、健康を害すほど大量に摂取することは不可能に近いと言えます。

清涼飲料水中のアスパルテーム含量は,どの清涼飲料水おいても少量しか含まれておらず(4〜79mg/100ml),ADIに換算した量を見ても,例えばダイエットペプシコーラを一日4L飲むことは通常ありえないので,常識的な摂取方法では問題は少ないと考えられた。
測定した中で一番アスパルテーム濃度が高かった黒酢ダイエットは,通常2.5L以上を飲むことは考えにくく,またパッケージがミニサイズで,一度に多量に摂取できないように工夫されている。
したがって,日常生活で健康な人が普通に摂取する程度では人体に影響はないと言ってよいだろう。ただし,ADI2000が正しい量であるとした仮定に立っての結論である。
CiNii 論文 – 清涼飲料水中のアスパルテームに関する研究

アスパルテームは安全と言わざるを得ない

現在のところ、アスパルテームを危険とする根拠は見つけられませんでした。危険である可能性を示唆するものはありますが、現実的な摂取量ではない場合を前提としているものが多く、あくまで可能性の域であるという状態です。

30年以上使用されているにも関わらず、アスパルテームが原因と特定される病気が、砂糖が原因とされる病気のように表面化していないことも、アスパルテームを危険とは言えないことを裏付けています。(参考7

ただし、アスパルテームを含む飲料を飲みかけの状態で2ヶ月以上放置すると、その 2/3 が分解され、分解物の中にピペラジンという別の有害な物質が生成される可能性があるため、保存には注意が必要とされます。(参考4

ある成分が危険であるとする情報を見る場合は、それが現在市販品に適用されている基準値内の話なのかを確認する必要があります。基準以上の量を摂取するような偏った食生活をすれば、どんなに安全な物質でも有害なものになってしまいます。

基本的に、公的機関以外のインターネット上の健康に関する情報で、情報の出典が明記されていない記事は信頼に値しません(著者が所属機関と実名を明らかにして医療従事者を名乗っている場合はその限りではありません)。

出典を書かなければ、その情報が嘘や捏造でないことを確かめるすべがありません。

参考文献一覧

参考1: Aspartame, a sweet-tasting dipeptide D. Eric Walters Dept. of Biochemistry and Molecular Biology Finch University of Health Sciences/The Chicago Medical School

参考2: Aspartame 22839-47-0 | 東京化成工業株式会社

参考3: aspartame | C14H18N2O5 – PubChem

参考4: CiNii 論文 – 清涼飲料水中のアスパルテームに関する研究

参考5: Review paper Effects of aspartame metabolites on astrocytes and neurons

参考6: よくある質問 (消費者向け) |厚生労働省

参考7: Aspartame | European Food Safety Authority

参考8: Fact Sheet | EFSA explains the Safety of Aspartame | European Food Safety Authority

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

トラックバック URL

http://joyplot.com/life/2017/07/31/%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e7%94%98%e5%91%b3%e6%96%99-%e3%82%a2%e3%82%b9%e3%83%91%e3%83%ab%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%a0-%e5%ae%89%e5%85%a8-%e5%8d%b1%e9%99%ba/trackback/

PAGE TOP