リンゴ酸についてとリンゴ酸の健康効果

リンゴ酸が豊富なリンゴ

リンゴ酸はクエン酸と同じく疲労を回復させる物質と言われますが、どのような仕組みによってその効果が現れるのでしょうか。

今回は、リンゴ酸についてとその健康効果について紹介します。

リンゴ酸とは

リンゴ酸はその名の通り、リンゴに多く含まれる有機酸です。

リンゴに含まれる酸全体の80%程度を占めています。

リンゴ酸の化学構造

1785年にリンゴジュースから分離・発見された物質で、食品に強い酸味を与えています。

Malic acid was first isolated from apple juice in 1785, and it’s what gives some foods and drinks a tart taste.
Malic Acid: Skin Care in a Wine Glass

リンゴ以外にも様々な植物が体内でリンゴ酸を生成するようです。例えば、ブドウなどの果物にもリンゴ酸が含まれます。

ワインなどの酒類には、リンゴ酸による酸味をつけた種類があります。

リンゴ酸は爽やかではあるが強い酸味を持つ.
甘みが少ない赤ワインの製造において,乳酸菌によるマロラクティック発酵という工程をとることがあるが,その目的のひとつは,ぶどう由来のリンゴ酸を乳酸と二酸化炭素へ分解することである.
酸味が際だつリンゴ酸を減らし,カルボキシル基がひとつであり穏やかな酸味を持つ乳酸を増やすことにより,ワインの酸度が減少するとともに,微量芳香成分も付与される.
酸味を活かした清酒 大場孝宏

マロラクティック発酵とは、リンゴ酸を乳酸に変える発酵のことで、強いリンゴ酸の酸味を抑えるために行われる工程です。

マロラクティック発酵はワイン中のリンゴ酸が乳酸に変わる現象で、酸味は穏やかになり、 ヨーグルトのようなまろやかな香りも生まれます。

1gのリンゴ酸が0.67gの乳酸と0.33gの二酸化炭素に変わるため、ワインの酸量が低くなります。
神戸ワインはこうして生まれる│神戸ワイナリー(農業公園)

リンゴ酸の効果

確認されているリンゴ酸の効果についてです。

抗菌作用

有機酸は抗菌性があることで知られていますが、リンゴ酸は乳酸よりも弱くクエン酸よりも強い抗菌性を持ちます。

脂肪族有機酸の抗菌性をpH変化による非解離分子の影響を除去して比較するために各有機酸を0~0.5%の範囲に添加後、pHを全て5.0に調整して検討した結果、B.megaterium に対する抗菌効果は酢酸>乳酸・コハク酸>リンゴ酸>酒石酸・クエン酸>塩酸の順で、酢酸が著しく強いのに対しリンゴ酸以下は微弱であり、塩酸はほとんど認められない。

バチルス菌の有機酸による制御では酢酸>アジピン酸>コハク酸>乳酸>リンゴ酸>クエン酸>酒石酸>塩酸となる。
(2012年4月発行)食品工場の微生物制御への有機酸の利用技術

ちなみに最も強いのが酢の主成分である酢酸です。酢については以下の記事をご覧ください。

食酢(お酢)の栄養成分と健康効果 肥満や血糖上昇を抑える

疲労回復効果

リンゴ酸が疲労回復に効果があるとされる理由は、細胞の呼吸に関与するためです。

リンゴ酸は以下のように、あらゆる生命活動のエネルギー源となるATPアデノシン三リン酸)の生成を行うミトコンドリアの反応であるTCA回路クエン酸回路)に必要です。

呼吸は大きく三つのステップに分けることができます。第一のステップが細胞質で起こる解糖系(glycolysis)です。教科書的に解糖系を一言で説明すると、「糖を分解して有機酸(ピルビン酸)を合成し、ATPを取り出す」ということになります。ただしこれは動物細胞の場合で、植物細胞の場合、最終産物はピルビン酸ではなくリンゴ酸であることが多いそうです(少なくともLambers et al. 1998はそう書いています)。最終産物がリンゴ酸の場合は、解糖系ではATPは合成されません。

リンゴ酸が最終産物になる場合は、PEPからオキザロ酢酸が合成され、さらにリンゴ酸が生産されます。ピルビン酸、リンゴ酸ともミトコンドリアに輸送され、TCAサイクルに入ります。

解糖系で生産されたピルビン酸もしくはリンゴ酸はミトコンドリアに輸送され、TCAサイクル(クレブス回路・クエン酸回路とも)に入ります。TCAサイクルの役割は、ピルビン酸やリンゴ酸を分解して還元力(NADH・FADH2)を取り出すことにあります。また、ATPもわずかですが生産されます。このサイクルでピルビン酸は分解され、CO2が放出されます。呼吸で放出されるCO2はこれに由来します。
東北大学大学院生命科学研究科 植物生態学講座 合成の生理生態学講座 呼吸の機作

クエン酸には以下のような疲労回復が報告されていますが、リンゴ酸は体内でこのクエン酸の元となるオキサロ酢酸を作るために必要となります。

クエン酸摂取はヒトにおいて血中乳酸の除去を促進し,マウスに対する単独摂取では遺伝子レベルで糖新生亢進およびグリコーゲン合成促進作用を示したことが報告されている.本実験ではクエン酸投与後,水泳およびトレッドミル運動後血中乳酸値の上昇を有意に抑制し,トレッドミル訓練群では低下傾向が観察された.

すなわち,乳酸の分解を亢進しグルコースの分解を抑制することにより血中乳酸濃度を低下させたことが推察される.今回の運動条件では,いずれの運動の場合も乳酸値上昇抑制に運動前のクエン酸の補給が有効であると考えられ,特に訓練していない場合に負荷の強弱によらず有効である可能性が示唆された.
ラットにおける運動前のクエン酸および 酢酸投与が血中乳酸値に及ぼす影響

以上の理由から、疲労に効果があるとされます。

薬としての利用

リンゴ酸の塩(エン)には、咳止めの効果があるものも報告されています。

果実は秋に熟すと表面にリンゴ酸の塩よる白い粉屑がつきます。これをなめると塩辛いところから塩麩子(えんふし)と呼んで咳止めなどに使われます。
星薬科大学 薬用植物園 — 季節の薬草

また、1%程度のリンゴ酸を混ぜた催唾液薬は唾液の分泌量を増やすため、高血圧の薬などを服用した時の口内乾燥を防ぐ効果などが示唆されています。

Effectiveness of malic acid 1% in patients with xerostomia induced by antihypertensive drugs

植物の免疫力強化

リンゴ酸を含む土で育てられたトマトに感染症を防ぐ効果が見られたことが報告されています。

当研究室の研究により、植物感染に関わる物質のひとつとしてL‐リンゴ酸を特定しています。また発表者の研究により、L‐リンゴ酸の非天然型異性体であるD‐リンゴ酸に対しても、R. solanacearumは強い走化性応答を示すことが分かっています。そこで、前述のアイデアを検証するために、事前にL‐リンゴ酸、D‐リンゴ酸及びDL‐リンゴ酸(工業製品で食品添加物)を土壌添加しトマトに対する植物感染試験を行いました。その結果、いずれのリンゴ酸化合物もR. solanacearumの植物感染を遅延させることが分かりました。
第32回広島大学バイオマスイブニングセミナーのご案内 | 広島大学

DL-リンゴ酸とは

厚生労働省行政情報の指定添加物リストによると、DL-リンゴ酸とそのナトリウムとの結合物質であるDL-リンゴ酸ナトリウムが添加物として指定されています。

DL-リンゴ酸は工業的に生成されるリンゴ酸で、主にpH調整剤として添加されるようです。

リンゴ酸ナトリウムには、ある程度の抗菌性があることが確認されています。

いかの燻製製造工場で製造されたいかの燻製に白色粘凋物質が生成、その原因菌は耐塩性のMicrococcus属細菌であった。2種類のMicrococcus属細菌であることが同定された。これらの細菌の増殖を防止するために有機酸塩の検討を行った。

リンゴ酸ナトリウムは2~6%の添加では増殖を促進したが、10%添加でほぼ完全に増殖が抑制された。
(2012年4月発行)食品工場の微生物制御への有機酸の利用技術

参考

りんご |  栄養士・調理師・製菓衛生師の学校:兵庫栄養調理製菓専門学校

日本食品添加物協会 食品添加物の種類と用途例

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