キトサンの健康効果について キチンやグルコサミンとの関係

キチンを含むカニ

キトサンという成分を売りにした健康食品を見て、その効果について気になったので調べてみました。

キトサンとは

キトサンは多数のグルコサミンが結合して連なった多糖類の一種です。

糖ではありますが、食物繊維に分類される多糖類です。

植物の細胞壁に構造が似ているため、体内では消化されにくいそうです。これはコンニャクのグルコマンナンに似ていると言えます。

主にエビやカニの甲羅に含まれるキチンと呼ばれる多糖類を処理して得られるものです。

キチンは、地球上で年間1千億トンにもなる膨大な量が生物により生産され、かつ分解されています。
キチンはカニやエビなど甲殻類の殻、イカなど軟体動物の骨、昆虫の外皮、きのこや菌類の細胞壁などに含まれています。
キチン・キトサンの自然循環と健康な生活 | 福井大学

キノコなどの真菌類にも含まれており、それらからも抽出できるようです。

今回、近畿大学・深溝教授は福井県立大学・木元久教授、福井工業大学・草桶秀夫教授と共同で、キトサンを捕える働きをもつタンパク質に着目して研究を進めた結果”ディスコイジン・ドメイン”と呼ばれるタンパク質に、キトサンだけを捕らえる働きがあることが明らかになりました。
このようなキトサンだけを捕えることのできるタンパク質の発見は今回が世界初となります。
今後は食品に利用されるキノコやカビ類からも、安全で良質のキトサンやグルコサミンを効率良く生産し、血中コレステロールを低下させるためのサプリメントなど、機能性食品に応用されるものと考えられます。
血中コレステロールを低下させ動脈硬化や高脂血症の予防作用を持つ”キトサン”を 捕らえるタンパク質を発見、世界で初めてその仕組みを解明!~近畿大学農学部バイオサイエンス学科の研究により~ – ニュースリリース – 近畿大学

ちなみに、グルコサミンもキチンから作られています。

グルコサミンは関節痛の予防に効果があるとしてよく知られている成分です。

キトサンの健康効果

キトサンの主な効果は、脂肪吸収の抑制とコレステロールの低減です。

脂肪を吸収されにくくする効果

まず脂肪吸収抑制についてですが、キトサンを含む食品を食べることによって、摂取した脂質が多く排泄されることが確認されています。

総括すると、キトサン摂取は、ラットおよびヒトに於いて経口摂取した脂質や脂溶性生体異物の糞便中への排泄を促進した。
キトサン摂取による糞便中への脂溶性生体異物の排泄は、糞便中への総脂質排泄量と有意な正の相関関係を示したため、排泄促進メカニズムのーつとして、脂質吸収阻害作用による糞便中への脂溶性生体異物の排泄を促進する可能性が提案された。
北海道大学 キトサン摂取が脂質および脂溶性生体異物の糞便中への排泄に及ぼす影響

これは、膵臓から分泌される膵液に含まれる消化酵素であるリパーゼの働きを抑えるためだとされています。

リパーゼの働きを抑える薬(阻害薬)は実際に肥満の治療に用いられており、それと同じような効果が現れるのだと考えられます。

消化吸収段階での脂肪等の消化吸収を抑制することで,エネルギー摂取を制限することで肥満を治療・予防することが提唱され,実際に臨床の現場ではオルリスタトなどのリパーゼ阻害剤が肥満治療に用いられている.
著者らは,キトサン等の食物繊維に膵臓リパーゼ活性の阻害効果を有することを報告したが,本研究では,キトサンによるリパーゼ活性の阻害がどのような作用機序にて生じるのかを明らかにすることを試みた.
膵臓リパーゼ活性の阻害に及ぼすキトサンの影響

マウスだけでなく人でも効果が確かめられているため、サプリなどの健康食品に利用されています。

コレステロールの減少効果

胆汁酸を体外に出すことで血液中のコレステロールが少なくなることが確認されています。

胆汁酸は長く腸内に残ると機能が低下し、新しい胆汁酸の合成も抑えられてしまう。
このため、腸管内で古い胆汁酸をレジン(樹脂)に吸着させて、便と一緒に体外に排出させると、新たな胆汁酸の合成が促され、血中のコレステロール値が低下し、脂肪肝の抑制にもつながる。
胆汁酸の排出で糖尿病が改善 コンニャクにも予防効果 | ニュース・資料室 | 糖尿病ネットワーク

キトサンは、この胆汁酸を排出する効果が他の食物繊維に比べて非常に強いことがわかっています。

どれくらいかというと、他の食物繊維の数十倍(〜60倍)の胆汁酸吸着力を持ちます。

キトサンの胆汁酸吸着率は60%で他の食物繊維は1~2%であった.
膵臓リパーゼ活性の阻害に及ぼすキトサンの影響

その他の健康効果と注意点

キトサンは、さらにがんに対しても有効であることが示唆されています。

最近では、キトサンは、血圧やコレステロール値を下げるなどの作用があり、健康食品として注目されています。
キチン・キトサンが酵素によって分解されたものは、水に溶け、抗ガン剤や抗菌剤としての応用が期待されています。
カニの甲羅で米作り?!キチン・キトサンの研究。環境情報学部 環境・食品科学科 草桶研究室 環境・食品科学科

脂肪の排出を促すキトサンですが、長期的なキトサンの摂取はカルシウムの排出量も増やしてしまう可能性があることが示唆されています。

その一方で、キトサンのキレート作用や吸着作用などにより、カルシウムの腸管吸収を阻害するとの報告もなされている。
食事カルシウムの吸収阻害が長期間継続すると、カルシウムの慢性的摂取不足や閉経による骨吸収の亢進時には骨量減少を引き起こす可能性が推測されている。

これらの結果から、キトサンの長期摂取による骨量減少はカルシウムの吸収が阻害されるというより、尿中へのカルシウム排泄が促進され、低カルシウム血症を伴う骨吸収の亢進に基づくことが示唆された。
また、キトサンによるカルシウムの尿中排泄増加はリンの吸収阻害作用を介して発現する可能性も示された。
早稲田大学大学院 人間科学研究科 食物繊維キトサンの長期摂取が引き起こす卵巣摘出ラットの骨量減少

このキトサンによるカルシウムの排出を防ぐためには、一緒にビタミンCカルシウムを意識的に摂取することが有効であることが確認されています。

最後に、キトサン摂取による骨量減少がビタミンC及びカルシウムの添加により軽減できるか否かについて検討したところ、ビタミンCは尿中へのカルシウム排泄を抑制することによってキトサン摂取が引き起こす骨量減少を軽減し、カルシウム補充はカルシウムの体内保留量を増やし、キトサン摂取による低カルシウム血症を改善することによって、骨吸収を抑制し骨量を維持することが示された。
早稲田大学大学院 人間科学研究科 食物繊維キトサンの長期摂取が引き起こす卵巣摘出ラットの骨量減少

キトサンの用途

栄養として摂取する以外でも食品・医療分野で様々なことに応用されています。

例えば、小麦粉にキトサン混ぜると生地の強度が増し、より大きなパンを作ることができるそうです。

参考: 鳥取大学産学・地域連携推進機構 研究シーズ集 キチン・キトサンナノファイバーを利用した小麦粉製品の生地強度を高める技術

医療分野では、人工皮膚が有名です。

また、キトサンは植物に対しても成長の促進や病気の予防などの良い影響を与えるようです。

ある種の植物や蔬菜類にキトサンやその分解物を与えると、植物病原菌に対する抵抗性が高まり、病原菌に感染しにくくなったり、感染しても病気が広がらないことが知られています。
また、キトサンを利用することにより、バレイショやカンショの収穫量の増加やニンニク、レタスなどの品質向上、ニンジンの生長促進効果などが認められ、様々な有効性が実際の圃場等の実験でも得られています。
シリーズ・身近な物質 キチン・キトサン③ キトサンと植物病原菌 東京農業大学短期大学部醸造学科教授 中西載慶

おしまい

以上のように、キトサンはグルコサミンの仲間で、それによる肥満防止やコレステロール現象作用は科学的に証明された効果であることがわかりました。

キトサンを補給するときは、カルシウムとビタミンCも摂取するとより安全であると言えます。

参考

キチン・キトサン

廃カニ殻から抽出する新素材 ”キチンナノファイバー” 有用バイオ資源の活用により地域活性化を目指す

CiNii 論文 –  O2-68 健康食品(キトサン)の使用によりバルプロ酸の血中濃度が低下し、発作再発した若年女性例(副作用2,一般演題(口演),てんかん制圧:新たなステージに向けて,第41回日本てんかん学会)

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