ベンゼンとはどんな化学物質なのか 毒性や用途について

最終更新日時 : 2017年10月1日
化学物質を扱う化学器具

築地市場から豊洲市場への移転に関して、ベンゼンという化学物質が多く検出されたということが発表されました。

高校で化学(有機化合物)の学習をした方は、ベンゼンと聞いて「六角形」を思い出すかも知れません。問題になるということは、人体に有害な性質を持つということですが、ベンゼンにはどのような毒性があるのでしょうか。

今回は、このベンゼンがどんな物質であるかについて紹介します。

ベンゼンの基本的な性質

ベンゼンの化学的性質と物質としての性質についてです。

ベンゼンの化学的性質

ベンゼンは以下のように、輪っか状に炭素原子が正六角形に並んだ構造をした有機化合物です。炭素原子6個と水素原子6個が綺麗に並んでいます。分子式は C6H6 と表されます。

ベンゼンの化学構造

単結合(1本の線でつながっている部分)と二重結合(2本の線でつながっている部分)は交互になっていれば、場所が変わっても大丈夫です。

これを毎回描くのは大変なので、よく以下のような略式が使われています。

ベンゼンの簡易表記

この形を健康食品のパッケージなどで目にしたことがあるかもしれません。この構造はベンゼン環と呼ばれ、他の様々な化学物質に含まれています。

例えば、以前紹介したポリフェノールのカテキン(エピガロカテキンガレート)にも複数のベンゼン環が含まれています。
エピガロカテキンガレートの化学構造

エピガロカテキンガレートの化学構造

少し脱線しますが、以下のようにベンゼン環に OH が結合したものをフェノールと呼び、それを多く持っている化学物質はポリフェノールと呼ばれています。

フェノールの化学構造

ポリフェノールが健康に様々な良い効果をもたらすことは広く知られているように、このベンゼン環を含んでいても、ベンゼンの性質をそのまま持つわけではありません

あくまで何も結合していない状態のベンゼンが問題となっているのでご注意ください。

ベンゼンの物質としての性質

ベンゼンは、常温で無色〜薄黄色の液体で、ガソリンのような匂いがあります。

5.5℃以上で液体であり、80℃で沸騰します。しかし、強い揮発性があるため、沸騰しなくても通常の環境の温度で気体として空気に混じります。

また、強い引火性があり、燃えると大量のススを出します。水にはほとんど溶けません。

参考: benzene | C6H6 – PubChem

ベンゼンの毒性

さて、問題となっているベンゼンの毒性についてです。

公益財団法人 日本中毒情報センターが発表する資料によりますと、急性毒性・慢性毒性のどちらもが確認されています。

呼吸によってや皮膚からも吸収され、神経系をはじめとする全身性の中毒を引き起こすとされます。

Benzene causes central nervous system damage acutely and bone marrow damage chronically and is carcinogenic.

Exposure to this substance causes neurological symptoms and affects the bone marrow causing aplastic anemia, excessive bleeding and damage to the immune system.

(訳)
ベンゼンは中枢神経系に大きな損傷、および骨髄への慢性的な損傷を与え、さらに発がん性を持つ物質でもある。

この物質に晒されると、神経的症状や骨髄への影響による再生不良性貧血、極度の出血および免疫システムへの損傷が引き起こされる。
benzene | C6H6 – PubChem

軽度な症状は吐き気嘔吐頭痛めまいなどで、重症になると不整脈意識障害痙攣などが起こる可能性があります。

重度になると、骨髄の造血幹細胞に影響を与え、貧血や白血球減少などの造血障害が起こるとされます。また、皮膚に触れると皮膚炎水疱などが起こるようです。

吸入されたベンゼンの46%が肺から吸収されてしまうという報告もされています。口から摂取した場合と、呼吸によって取り入れた場合の中毒が起こる量は以下のように推定されています。

方法
経口 130mg/kg
吸入 150ppm/年(1ppm → 3.19mg/m3

経口に関しては、体重60kgの人であれば、7.8g を摂取しなければ中毒にはならないため、そこまですぐ摂取できる量ではないように見えます。

マウスの経口による半数致死量(LD50)は 4.7g/kg であり、分類上は弱い毒性食塩と同じ程度の毒性)とされます。(日本毒科学会の資料より)

おそらく、問題となるのは気体としてベンゼンを吸い込む場合ではないでしょうか。ベンゼンは前述の通り、強い揮発性(気体となる性質)を持っていますので、ベンゼンが気体して存在する環境下で長時間活動すると、大量のベンゼンを吸い込むことになります。

実際、1960年ごろ、大阪生野区のビニール履物製造者の間で慢性ベンゼン中毒が流行した事実があります。

また、アルコールがベンゼンの毒性を強めたり、逆にベンゼンがアルコールの代謝を阻害して、体内にアルコールを残りやすくすることなどが示唆されています。

加えて、国際がん研究機関(IARC)による発表では、発がん性がある物質として分類されています。

ちなみに、タバコやガソリンにもベンゼンが含まれています。ガソリンの1.5〜6%がベンゼンで、タバコは1日20本で1.25mgの摂取量となります。

かつて、一部の清涼飲料水の製造過程で生成されるため、問題になったことがあるそうです。安息香酸アスコルビン酸ビタミンC)との反応で生成されます。

ベンゼンは毒性のある(IARC のグループ1)有機化合物で,清涼飲料水製造中に食品添加物又は原料中に存在する安息香酸とアスコルビン酸の反応で生成するため,食品由来汚染物質の範疇に属します。
この知見が得られたときは問題になりましたが,極めて微量であり,WHO 飲料水ガイドラインの 10 ppb 以下であれば,問題は少ないだろうといわれています。
食品加工中に生成する有害化学物質 ヘテロサイクリックアミンからアクリルアミド

アスコルビン酸に限らず、還元性を持つ化合物との反応によって安息香酸からベンゼンと二酸化炭素が生成されるとされます。

アスコルビン酸を含有しない検体からもベンゼンを検出したことから,アスコルビン酸に限らず,還元性のある有機酸や糖類等の物質が共存すると,安息香酸が還元されベンゼンが生成する可能性が考えられた.

結論として,安息香酸からのベンゼンの生成には,アスコルビン酸等の還元性物質や重金属の存在,時間の経過等様々な要因が複雑に関与している可能性が示唆された.
安息香酸からベンゼンが生成する化学反応の概念図
清涼飲料水等に含まれるベンゼンの実態調査について 岩井徹 西岡達彦 中島敏浩 重東和宏 三宅伸子

参考文献

ベンゼンの用途

ベンゼンは工業的に様々な用途に利用されています。

例えば、工業的に使用される有機化合物を溶かすための有機溶剤や塗料、合成ゴム、合成洗剤、香料、合成樹脂や繊維、薬品、ガソリンなどです。

以下では、代表的なベンゼンの反応物について紹介します。前述の通り、ベンゼン環を含んでいるからといってベンゼンの毒性を持っているわけではありません。

ベンゼン環に他の物質が結合すると、その性質は変化します。

パラジクロロベンゼン

C6H4Cl2

パラジクロロベンゼンの化学構造

ベンゼンに塩素2つが対面する位置で結合した物質です。

「パラ」は対面する位置のことを指す名称で「ジ」は2つを意味し「クロロ」は塩素のことを指します。

香りが強く、消臭剤や衣服の防虫剤として使用されています。

ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)

C6H6Cl6

ヘキサクロロシクロヘキサン ベンゼンヘキサクロリド

ベンゼンに紫外線を当てながら塩素(Cl)と反応させると生成される物質です。ベンゼンヘキサクロリドBHC)とも呼ばれます。

「ヘキサ」は6つを意味します。ヘキサゴン(六角形)のヘキサと同じです。

「シクロ」は環状であることを意味します。

以前は殺虫剤として使用されたこともありましたが、毒性や残留性が強いため現在は使用が禁止されています

おしまい

ベンゼンは、工業製品の製造には欠かせない物質ですが、同時に毒性がある物質でもあることがわかりました。

気化して空気に含まれる可能性が高いため、できるだけ生活環境では低濃度になるようにする必要があると言えます。

その他の参考文献

芳香族化合物 | 生物分子科学科 | 東邦大学

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